
化学業界に将来性はあるのか?転職時に確認したい5つのポイントを紹介
化学業界への転職を検討している方にとっては、個々の企業の情報だけでなく、業界全体の将来性や動向も気になることではないでしょうか。
そこで本記事では、化学業界の将来性や最新の動向などを紹介します。
将来性を見据えた転職先選びのポイントなども解説しますので、ぜひ参考にしてください。
化学業界の将来性はあるのか?

化学業界は、エネルギー、電子機器、医薬品など、さまざまな産業を支える基盤産業です。
経済産業省の「化学産業の現状と課題」によると、日本では、約2万の事業所、約95万人の従業員が化学産業に携わっており、出荷額は約46兆円にも達します(2020年時点)。
化学業界の今後の成長性としては、テクノロジーの進化や環境へ配慮する動きが追い風となる一方で、原油価格の変動や市場競争の激化といったリスクも見逃せません。
以下では、化学業界の将来性を左右するプラス要因とマイナス要因を解説します。
世界的な需要の増加が予想される
近年、テクノロジーの発展により、化学製品の需要は急速に拡大しています。
特に、半導体やリチウムイオン電池といった製品は、ITやエレクトロニクス産業に不可欠であり、その需要は今後も伸び続ける見込みです。
経済産業省の「半導体政策について」によると、
半導体は、スマートフォンや自動車、家電などあらゆる電子機器に不可欠であり、2030年までにその市場は100兆円規模に達すると予想されています。
この成長に伴って、半導体材料の供給を担う化学メーカーの需要も高まる見込みです。
ただし、日本の半導体産業自体は1990年代から徐々に国際的なシェアを低下させていることが懸念点ではあります。
一方、リチウムイオン電池の需要を高めているのは、EV(電気自動車)市場の拡大です。
そのため、リチウムイオン関連の化学製品の需要も拡大していくと考えられます。
ただし、EVの伸びは世界的に鈍化しており、アメリカをはじめとする各国の政策変化の影響などに対しても警戒が必要です。
上記のように、いくつかの懸念点はあるものの、基本的に化学製品の需要は世界的に増加が予想されます。
ただし、日本国内の内需はバブル崩壊以降、縮小傾向にあり、生産能力との乖離が進んでいます。
したがって、日本の化学メーカーが成長するためには、グローバル展開が鍵になります。
原油価格の影響が大きい
世界的需要の拡大という追い風が吹いている一方で、多くの化学メーカーに不安視されているのが原油価格の変動です。
化学業界は原油を主な原料として使うため、原油価格の変動が業界全体に著しい影響を及ぼします。
特に日本は原油自給率が0.5%未満と非常に低水準にあるため、国際情勢の変化を大きく被るという構造的弱点を抱えています。
実際に2020年以降、新型コロナウイルスの流行やウクライナ危機などの影響を受けて、原油価格は高騰しました。
昨今の円安も輸入金額の増加を後押ししています。
原油価格が高騰すると、化学メーカーは原材料コストの上昇に直面し、利益率が低下します。
例えば、排水処理やph調整などに使われる苛性ソーダの製造原価の約5割はエネルギーコスト(電気代)です。
原油価格の変動という不安要素を軽減し、脱石油化の動きが鍵となります。
省エネ技術の導入や原油に代わる代替原料の開発といった施策は、単に地球環境への配慮という面だけでなく、
10年後、20年後を見据えて日本企業の競争力を強化するためにも重要な課題です。
化学業界に属する企業

化学業界には数多くの企業が存在しますが、大別すると総合化学メーカー、誘導品メーカー、電子素材メーカーの3つに分類できます。
以下では、それぞれの企業の特徴や代表的な企業について詳しく解説します。
総合化学メーカー
総合化学メーカーは、基礎化学品から機能性化学品まで、多岐にわたる製品を扱う企業です。
原料の調達から製品の企画・開発・製造・販売までを自社で一貫して行うのが特徴であり、技術力が高く、規模の大きい企業が多い傾向にあります。
これらの企業は、単独での利益追求だけでなく、素材メーカーとして他の産業に必要な材料を供給する役割も担っています。
例えば、自動車、電子機器、建築資材、医薬品など、幅広い分野で活用される材料を提供しており、産業全体の発展に不可欠です。
また、総合化学メーカーは研究開発に力を入れており、新技術や新素材の開発を積極的に行っていることが多いのも特徴です。
そのため、新しい市場の開拓や環境負荷の低減につながる技術革新が期待されています。
【代表的な総合化学メーカー】
三菱ケミカル株式会社
住友化学株式会社
株式会社レゾナック・ホールディングス
旭化成株式会社 など
誘導品メーカー
誘導品メーカーは、基礎原料を基に中間材料を製造し、完成品の製造企業に供給する企業のことです。
例えば、塩化ビニルや合成樹脂など、さまざまな産業で活用される中間材料を生産します。
誘導品メーカーはBtoB(企業間取引)メインで事業を展開しているため、一般消費者には馴染みの薄い企業が多いです。
しかし、他のメーカーにはない独自技術を持っている企業が多く、完成品の最終的な品質を左右する非常に重要な役割を担っています。
ただし、市場の変化や技術の進歩によって、独自技術やその価値が他の技術に代替される可能性がある点には注意が必要です。
企業としては、常に新しい技術を取り入れ、競争力を維持する戦略が求められます。
【代表的な誘導品メーカー】
信越化学工業株式会社
東レ株式会社
帝人株式会社
JSR株式会社 など
電子素材メーカー
電子素材メーカーは、半導体やディスプレイなど、電子機器に不可欠な素材を製造する企業です。
スマートフォンやパソコン、家電、車載電子機器など、多くの製品に用いられるため、高い技術力が求められる分野でもあります。
電子素材メーカーは誘導品メーカーと同じく、BtoBでの取引が主です。そのため、一般的な知名度はそこまで高くありませんが、日本の電子素材メーカーの中には、世界的に高いシェアを誇る技術力の高い企業も数多く存在します。
一方で、この分野は市場の変化が激しく、新技術の導入が遅れると競争力を失うリスクが高いのも特徴です。
電子素材メーカーは誘導品メーカーよりも最終製品に近い製品を扱うため、市場のトレンドや需要変動の影響をより受けやすくなります。
【代表的な電子素材メーカー】
富士フイルムホールディングス
日東電工株式会社
住友ベークライト株式会社
東京応化工業株式会社 など
将来性のある化学メーカーの5つのポイント

化学メーカーへの転職を考える場合、将来性のある企業を見極めることは非常に重要です。
安定した経営基盤や成長が期待できる企業を選ぶことで、長期的なキャリア形成をしやすくなります。
ここでは、化学メーカーの将来性を見極めるために特に注目すべきポイントを解説します。
1. 売上高が高い
最初のチェックポイントは売上高です。売上高の高さは、経営の安定性を示す重要な指標になります。
売上高が大きい企業は、企業規模も大きく、経営基盤が安定していると考えられます。
多角的に事業展開を行っていることも多く、一部の事業が低迷しても他の分野でカバーすることが可能です。
これは、企業の安定的持続を支えるリスク分散の役割を果たします。
また、売上高の高い企業は、研究開発費に積極的に投資できる余裕があるため、技術革新を推進し、新しい市場を開拓する力を持っていることも見逃せません。化学業界では、新技術の導入や環境対策が企業の競争力を左右するため、この点は特に重要です。
2. 利益率が高い
売上高と共にチェックしたいのが、利益率の高さです。いくら売上高が高くても、利益率が低いと資金的余裕は生まれません。
利益率が高いということは、経営や生産体制が効率化されており、コスト管理が優れていることを示しています。
こうした企業は高い技術力や独自のノウハウを持っていることも多く、高い競争力が期待できます。
利益率の高い企業は株主への還元が期待できるため、投資家からの評価が高いこともポイントです。
積極的な投資を受けることで、新規設備や研究開発、新規事業への投資ができる資金的余裕ができるため、さらなる成長が期待できます。
参考までに、経済産業省の調査によると、2023年度の製造業全体の売上高営業利益率は5.2%でした。
そのため、利益率が10%を超えるような企業だと、非常に優良だと捉えられます。
参照元:経済産業省「2024 年経済産業省企業活動基本調査速報(2023 年度実績)調査結果の概要」
3. 社員の平均年収が高い
社員の平均年収は、企業がどれだけ人材を重視しているかを示す重要な指標です。
平均年収が高い企業は、優秀な人材を引きつけやすく、企業全体の成長を支える力となります。
また、給与水準が高いと社員のモチベーション向上につながり、企業全体の活性化にも寄与します。
特に化学業界の場合、従業員の専門知識や技術力は市場競争力に直結します。
そのため、専門性の高いスキルを持つプロフェッショナルな人材を呼び込める高報酬を提示できる企業は将来性が高いです。
もちろん、実際に転職を希望する方にとっても、平均年収の高さは生活の安定やキャリアアップなど個人的な観点からも見逃せない要素です。
各企業の年収は、求人募集の条件欄や口コミサイトなどを通じて推測できます。
転職に際しては、福利厚生や昇給制度なども併せてチェックしましょう。
4. 取扱い製品の市場シェアが高い
市場シェアの高さは、その企業の製品が市場でどれだけ支持されているかを示す指標です。
市場シェアが高い企業は、顧客からの信頼が厚く、競争力を持っているため、安定した収益が見込めます。
日本の化学業界の場合、特定の機能に特化した「機能性化学品」の分野で世界的に高いシェアを誇っている企業が多いのも特徴です。
こうした化学製品は、個々の市場規模は1,000億円程度(参照元:経済産業省「化学産業の現状と課題:P16 日本の化学企業のポジション)と小さいですが、その分野では確かな地位を確立しています。
また、化学業界には、環境にやさしい製品やEV関連製品など、今後さらなる拡大が期待される新分野もあります。
そのため、転職を検討する際は、その企業がどのような製品を扱っているか、その市場でどのくらいのシェアを獲得しているか、そしてその市場は現状どのくらいの規模で今後拡大する可能性があるかなど、多角的な視点で調べることが重要です。
5. 石油製品への依存度が低い
石油製品への依存度の低さも、企業の安定性・将来性を見極めるための要チェックポイントです。
先に解説したように、化学メーカーはエネルギーコストに利益率が大きく左右されます。
しかし、石油は国際情勢の影響を受けやすく、価格変動が大きいため、石油製品への依存度が高いと、原料の調達コストが不安定になりがちです。
特に日本は、原油の90%以上を中東に依存しており、政情不安や紛争が起こるたびに価格が高騰する可能性があります。
その点、石油製品に依存しない企業はそうした地政学的リスクを抑えることが可能です。
近年では、エネルギー効率の良い生産体制を構築したり、石油の代替となる再生可能エネルギーやバイオプラスチックなどの生産技術への注目度が高まっています。
このような分野へ積極的に取り組んで実際に成果を出している企業は、長期的な成長が見込めるため、転職先として魅力的です。
また、環境への配慮が求められる現代において、サステナブルな製品を扱う企業は投資家や市場からの評価も得やすいです。
従業員側は、特に環境問題への関心が高い場合、そうした社会的課題に取り組む企業で働くことはやりがいにつながります。
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この記事の寄稿者
化学業界は、世界的な需要拡大が予測される一方で、原油価格の変動などの影響もあります。転職を成功させるためには、売上高や利益率、市場シェア、成長分野への対応などから、総合的に応募先企業の将来性を判断することが重要です。エンジニアとして化学業界への転職を検討している場合は、ぜひメイテックネクストへご相談ください。
- 川端佳織