機械保全技能士とは?検定試験の詳細や難易度、取得するメリットについて解説
「将来的にモノづくりに携わる仕事がしたい」「もっと好条件で働ける工場などへ転職したい」と考えているのであれば、機械保全技能士資格の取得を視野に入れてみることをおすすめします。
本記事では、機械保全技能士の概要や試験内容、取得するメリットなどについてわかりやすく解説します。
機械保全技能士とは?
機械保全技能士とは、機械保全に関する技能を証明できる国家資格であり、資格取得者のみが「機械保全技能士」を名乗れる名称独占資格のひとつです(
無資格者が名乗ったり、関連業務を行ったりすると処罰対象になります)。
厚生労働大臣指定の試験機関である公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(JIPM:Japan Institute of Plant Maintenance)が実施しています。
資格は特級、1級、2級、3級の4段階に区分されており、特級が最上位かつ最難関です。受検資格については後述します。
機械保全技能士試験は、おもに量産工場やプラント工場などでサービスエンジニアや保全員として働く人々を対象にしています。
量産工場やプラント工場には、ガスや電気、給排水などのインフラシステムや機械設備が設置されており、これらの設備に不具合が発生すれば、生産を一時停止せざるを得ません。
工場にとって生産ラインを停止することは、収益に大きなマイナスインパクトを与え、莫大な損失を被る可能性があることを意味します。
機械保全技能士の役割は、このような事態を未然に防ぐことです。
個々の設備ではなく、生産ライン全体の様子を細かく観察・点検し、トラブルの芽を摘んでいきます。
国家検定「機械保全技能検定」の試験詳細
ここでは、機械保全技能検定の受検要件や試験の種類、難易度、合格率、試験内容について解説します。
受検要件
日本プラントメンテナンス協会が発表している「機械保全技能検定 受検資格」によれば、3級の受検資格は”機械保全に関する業務に従事している者または従事しようとしている者”(機械保全技能検定 受験資格から引用)とのみ記載されています。
3級はほかの級とは異なり、唯一、実務経験年数などが問われません。
2級より上の級は実務経験年数が必要になります。
2級の場合は機械保全に関する2年以上の実務経験が求められ、1級は7年以上の実務経験が必要です。
そのほかにも3級機械保全技能士の資格保有などさまざまな要件があります。
特級の受検資格は「1級機械保全技能士の資格保有者で、5年以上の実務経験がある」のみです。
実務経験については、工場などに配属されて就業したあと、機械保全に関する訓練や教育を受けた期間も含めることができます。
また、日本プラントメンテナンス協会の公式サイトには、受検資格の確認ができる受検資格判定フォーム(下記参照)が設けられています。
気になる方は確認してみてください。
検定試験の種類
機械保全技能検定は、特級を除いて「機械系保全作業」「電気系保全作業」「設備診断作業」の3種類に区分されており、それぞれ3級から1級まで等級が分かれています(ただし設備診断作業については2級からになります)。
試験で求められる知識や職場での役割などは等級によって異なります。
ここでは等級ごとの試験の対象者などについて解説します。
【3級】
対象となるのは学生や新入社員です。
新入社員に施した教育がどの程度理解されているのかを、企業が確認するために利用することもあります。
【2級】
保全員やオペレーターなどとして従事している新入社員および中堅社員が対象です。
教育成果の確認をはじめ、評価に使用されることもあります。
【1級】
製造部門あるいは保全部門を束ねるリーダー格の従業員を対象としています。
リーダーの技術評価を確認する際に用いられることがあります。
特級
リソースの割り振りや評価など、マネジメント業務に携わる管理職が対象です。
保全分野の監督者として十分な技術や知識を有しているのかの確認や技術評価に用いられることがあります。
難易度と合格率
機械保全技能検定の受検申請者数、合格者数、合格率は、日本プラントメンテナンス協会が公式サイトで公表しています。
2023年度試験の各等級の合格率は以下の通りです。
特級以外は、各等級で選択できるすべての作業を合算した合格率です。
・3級:76.4%
・2級:39.5%
・1級:33.8%
・特級:19.7%
受検に実務年数経験を問われない3級の合格率は76.4%であり、難易度はそれほど高くないと判断できます。
2級になると合格率は39.5%、1級では33.8%と、3級の半分程度に落ちてしまい、難易度は高いと考えられます。
特級では最短でも5年の実務経験が必要にもかかわらず、合格率はわずか19.7%で、相当な狭き門だと考えてよさそうです。
試験の合格ラインは各等級で違いはありません。
学科は加点方式で採点され、100点満点中65点以上で合格、実技は減点方式で採点され、41点以上減点されなければ合格です。
※参照元:機械保全技能検定|情報開示 試験結果情報
試験内容
いずれの等級も試験は学科と実技とがあります。
ただし、学科の出題形式は等級によって異なります。
ここでは学科と実技の詳細について解説します。
【学科】
学科試験は、全等級ともにマークシート方式で実施されます。
3級は真偽法で30問、2級と3級は真偽法25問、四肢択一式25問の計50問、特級は五肢択一式で50問の出題です。
特級以外の学科試験の共通科目は機械一般、電気一般、安全衛生、材料一般、機械保全法一般です。
選択制科目は、3級は電気系保全法か機械系保全法かのいずれかひとつ、1級と2級は設備診断法を加えた3つから選びます。
特級の学科試験には、生産の形態や生産活動の流れに関する知識が求められる工程管理のほか、作業標準化や方法研究の知識が必要な作業管理があります。
さらに、原価管理や作業指導、機械保全に関する現場技術、設備管理、品質管理などがあり、管理職に求められる幅広い知識が問われます。
【実技】
3級の実技試験は、機械系保全作業と電気系保全作業のうちいずれかひとつを受検します。
1級と2級は、3級の試験項目に設備診断作業を加えた3つのうちからひとつを選択します。
特級の実技試験は範囲が広く、工程管理や作業管理、品質管理、原価管理、安全衛生管理、作業指導、設備管理などが含まれます。
実技試験もマークシート方式で行われますが、電気系保全作業(1~3級)のみは作業採点、一部マークシート方式となっています。
実技試験といっても体を動かすのではなく、着席した状態で実施されます。
機械保全技能士の資格を取得する3つのメリット
機械保全技能士資格を取得することは、実務や今後のキャリアアップの面でさまざまなメリットがあります。
1. 機械保全の知識・スキルを体系的に学べる
第一のメリットが、製造工場やプラント工場の現場で求められる、保全に関する高度な知識やスキルを体系的に学べることです。
最も難易度が低い3級でも、機械の種類や用途、電気の専門用語、電気制御装置の基本回路、機械の保全計画、安全衛生に関する知識を網羅的に学ぶことができ、実務に役立つスキルを習得できます。
機械保全技能士資格は等級ごとに区分されているため、3級からチャレンジして、機械保全に関する基礎からステップアップしつつ学ぶことが可能です。
学んだことを現場で再確認しながら実務に携われば、機械保全への理解をさらに深められます。
2. 有資格者としての客観的な証明になる
資格を取得することによって、機械保全に関する知識やスキルを有する人材であることを客観的に証明できます。
企業によっては資格手当が支給されることもあり、さらには能力が評価されて昇進につながることもあります。
機械保全技能士の資格取得をキャリアパスに明記している企業であれば、高い確率で評価対象になって、昇給や昇進を期待できます。
資格保有者になれば、職場での役割にも変化が見られるかもしれません。
資格を取得することによって、機械保全に関する高度な知識やスキルを有する人材と判断されるため、機械設備トラブルの緊急対応やメンテナンス計画の策定など、これまで以上に高度な業務をまかされる可能性があります。
3. 転職活動などで有利になる
冒頭でも述べた通り、機械保全技能士は国家資格かつ名称独占資格であり、資格を取得していることを履歴書に記載すれば、転職活動などで大きなアドバンテージになることは間違いありません。
機械保全に関する高度かつ専門的な知識、技術を有する人材であるとアピールできるだけの裏付けがあるため、好条件で転職できる可能性は大いにあります。
結果的に、重要なポジションをまかされたり、年収がアップしたりといったことがあるかもしれません。
機械保全技能士の資格を活かせる仕事内容
ここからは、機械保全技能士資格が実際の業務においてどのように活かせるのかを解説します。
工場設備の保全や障害発生時の対応
機械保全技能士のおもな仕事としては、量産工場やプラント工場での設備保全、障害発生時の対応などがあります。
たとえば、自社工場で業務に携わる際には保全部門に所属し、工場内の各設備を点検したり、メンテナンスを行ったりします。
サービスエンジニアとして働く場合には、クライアントとなる工場へ足を運び、工場で設備の点検や修理を行うのが機械保全技能士資格者の役割です。
工場設備のメンテナンス計画を立案
設備保全担当者の業務のひとつに、メンテナンス計画の立案があります。
工場ではさまざまな機械設備が稼働しており、メンテナンスのためとはいえ、一斉にストップさせることはほぼ不可能です。
なるべく生産数を落とさず、利益を損なわずにメンテナンスを実施するには、綿密な計画が欠かせません。
このとき機械保全技能士には、自社工場や派遣先でのメンテナンス計画を策定し、今後の方針やスケジュールのすりあわせなどを行うという重要な仕事があります。
工場設備導入時のコンサル
工場へ新たに導入する機械設備に関して、現場や上層部にアドバイスを行うコンサルとしての役割も担います。
機械保全のプロフェッショナルとして意見を伝え、生産部門などと連携しながら、機械設備の導入をサポートします。
サービスエンジニアとして働く場合には、派遣先であるクライアント企業で打ち合わせに参加することもあります。
設備保全の観点から、導入によって発生するリスクや、現状の製造ラインへの影響などについて提言します。
設備保全の仕事の将来性
近年はモノづくりの現場ではAIやIoTの導入が進められ、スマートファクトリー化を目指した動きが出てきています。
従来の工場の生産方式であった大量生産ではなく、小ロット生産や短納期生産に対応する企業も増えており、そのような企業では機械設備のダウンタイム軽減は大きな課題のひとつになっています。
生産ラインを正常に稼働させ、なおかつダウンタイムを低減するには、機械設備や製造ラインを高度化させるだけでは不十分です。
その時々の状況を正確に見極め、適切な判断と行動を起こせるプロフェッショナルがいることによって、高度な機械設備や製造ラインが本来のポテンシャルを発揮できるようになります。
ここでいうプロフェッショナルこそ機械保全技能士であり、設備保全という仕事も含めて、将来性はきわめて明るいと考えられます。
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この記事の寄稿者
機械保全技能士は難易度の高い国家資格かつ名称独占資格のひとつです。
取得することによって、現在就業している企業での待遇アップが期待できるほか、転職する場合にも転職活動も有利に進められます。
「将来的にモノづくりに関わる仕事に就いて高収入を得たい」と考えているのであれば、資格の取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
- 幡多秀駿