未経験の転職は難しいのか? 年齢別の採用傾向や成功に導く転職のコツ
未経験の職種・業種への転職を検討している方にとって、「未経験で採用されるには何が必要か?」は最大の関心事でしょう。
本記事では、年齢別の転職成功率や採用の傾向を詳しく解説し、未経験からの転職を成功させるための7つのコツを紹介します。
さらに、IT・エンジニア職が未経験者におすすめの理由や、活用すべきエンジニア特化型の転職エージェントもご紹介します。
これからのキャリアに不安を感じている方でも、この記事を読むことで自信をもって転職活動に臨めるようになります。
転職の成功率は?
2019年に厚生労働省が公表したデータによると、転職希望者のうち、実際に転職できた人の割合は45.2%でした。
また、2023年に総務省が公表したデータによると、転職希望者の就業者に占める割合は2021年の13.2%から2023年には15.3%に上昇し、転職者の就業者に占める割合も4.3%から4.8%に増加しています。これにより、「転職を希望する人」と「実際に転職した人」の両方が増加傾向にあることがわかります。
2019年末に発生したコロナ禍で一時的に状況が変わりましたが、全体的には転職市場は活発です。
このことから、転職未経験者も同様に、転職が成功しやすい状況であると考えられます。
参照元:直近の転職者及び転職等希望者の動向について (総務省統計局)
【年齢別】転職成功者から見る採用の傾向
転職時の採用の傾向は年齢によって大きく異なります。ここでは、厚生労働省のデータを基に、20代、30代、40代のそれぞれの世代における転職成功率を解説します。
20代:ポテンシャル重視の採用
25~29歳の転職成功率は50.3%で、全世代平均より5.1ポイント高くなっています。
この数字は65歳以上の70.6%、60~64歳の67.1%、15~24歳の60.7%に次ぐ第4位です。
20代には第二新卒(新卒から数年以内)も多く含まれます。
未経験の業界・職種でも、社会人経験や成長ポテンシャルが評価されるため、転職成功の例が多く見られます。
また、20代は幅広い選択肢から応募できる強みがあります。
30代:実務経験重視での採用
30代の転職成功率は、前半(30~34歳)も後半(35~39歳)も同じ41.9%です。
これは全世代平均より3.3ポイント低いものの、25~29歳に次ぐ第5位です。
20代に比べて現職の業界・職種での経験が豊富で、企業は即戦力として30代を期待しています。
30代の転職希望者には、それまでに培った実務経験や専門スキルが求められます。
転職先が未経験の業種や職種であっても、これまでの経験やスキルをどのように活かせるかを示すことで、採用される可能性は十分にあります。
40代:キャリア重視での採用
40代の転職成功率は、40~44歳が36.2%、45~49歳が36.6%であり、全世代平均より約9ポイント低いです。
年齢別に見ると、50~54歳に次いで転職が難しいことを示しています。
しかし、40代ともなると30代以上に実務経験を積み、高いスキルをもっているため、キャリアを重視する企業には十分にフィットする可能性があります。
40代の転職希望者に企業が求めるのは、豊富な経験や洞察力を活かして自社の成長に貢献することです。
リーダーシップや戦略的思考、業界を超えた広い視野も、転職において有利な材料となります。
経験やスキルに自信があるなら、年齢を理由に転職を諦める必要はありません。
未経験・異業種への転職を成功に導く7つのコツ
ただ漠然と転職活動を行っていても、成功に至るのは容易なことではありません。特に未経験の業界や職種に挑戦する場合には、しっかりとした準備と戦略が求められます。具体的には、
(1)転職理由は明確にする
(2)自己分析を行いキャリアやスキルを棚卸する
(3)可能であれば転職活動は34歳までに行う
(4)職種を変えないことも検討する
(5)転職先を企業規模で選ばない
(6)転職前にマネジメントスキルを上げておく
(7)転職エージェントによる支援を受ける
といったことが重要です。
1. 転職理由は明確にする
特に未経験の転職の場合には「なぜ、この業界や職種に転職したいのか」の明確な理由をもつこと、そしてその理由を採用担当者にしっかりと伝えることが重要です。上述した通り、企業の転職希望者の採用傾向には年代別に違いがあります。例えば、即戦力となることを強くは期待されていない20代の未経験者を採用するのであれば、企業側は意欲やポテンシャルなどで転職希望者を評価するため、転職理由を明確にしておくことは非常に重要です。加えて20代に限らず、すべての年代において、転職後にどのような活躍ができるのかをイメージし、わかりやすく伝えることも大切です。転職理由が明確になっていないと、入社後に仕事内容や環境とのギャップに苦しむことになるかもしれません。転職後のミスマッチを防ぐためには、次項の「自己分析を行いキャリアやスキルを棚卸する」が重要です。
2. 自己分析を行いキャリアやスキルを棚卸する
自己分析するためには「これまでに自分がどのような仕事をしてきたのか」「自分はどのようなスキルをもっているのか」を可視化する必要があります。経験や実績、得意な分野、スキルを書き出してみることによって、自分のアピールポイントが明確になります。加えて、これまでの職務で培ったリーダーシップや問題解決能力、コミュニケーションスキルなどを、具体的なエピソードを交えてアピールできれば、採用担当者への説得力は大いに増します。自己分析を行って、自分の価値を再認識することで、未経験の分野でも自信をもって挑戦できるようになります。
3. 可能であれば転職活動は34歳までに行う
求人のなかには「30代前半まで」のように、応募者の年齢制限を設けている案件もあります。
転職希望者側から考えても、早期でのキャリア形成という観点からは、あまり年齢を重ねてからではなく、できるだけ早く転職活動を行うことが望まれます。上述した通り、30代および40代の転職成功率は全世代平均の値を下回ります。
可能であれば、34歳までに転職活動を行うことが成功への鍵となります。
ただし、30代後半になってしまったからといって、転職の道が閉ざされてしまうわけではありません。
豊富な経験やスキルをもっていれば、その価値を欲する企業は必ずあります。
4. 職種を変えないことも検討する
未経験の転職を大きく分けると、以下の3パターンに分類されます。
(1)職種は変えず、未経験業界へと転職する
(2)業界は変えず、異なる職種へと転職する
(3)職種も業界も変えて転職する
転職難易度が最も高いのは(3)であり、(2)、(1)の順番で難易度は下がっていきます。
(1)の同じ職種で新しい業界に挑戦する場合には、現在すでにもっているスキルや経験を活かしやすく、転職は比較的、成功しやすいと考えられます。
(2)の同じ業界内で異なる職種に挑戦する場合には、業界知の識は活かせるものの、新たな職務内容やスキルセットを習得する必要があり、やや難しくなります。
(3)の職種も業界も変える場合には、ほかの2パターンに比べて、より高い適応力と柔軟性が求められます。
以上のことから、未経験分野への転職を検討しているのであれば、まずは職種を変えずに業界を変えることが成功への近道です。
すでにもっている専門知識や技術を新しい業界で活用できる可能性が高いため、転職後でも早期の活躍が期待できます。
5. 転職先を企業規模で選ばない
転職先を選ぶ際に大企業にこだわるのではなく、中小企業やベンチャー企業をも視野に入れることで、未経験でも採用されるチャンスが広がります。大企業では新卒を大量に採用する傾向が強く、中途採用枠が十分に確保されているかどうかはわかりません。
そもそも誰もが知るような大企業の場合には、新卒・中途に限らず、競争率は非常に高く、採用を勝ち取ることは容易ではありません。さらに大企業は転職希望者に対して過去の実績などを重視する傾向が強いことも、転職の難易度を高めることになります。
一方、中小企業やベンチャー企業の場合には、転職希望者のポテンシャルや意欲を重視する傾向は、大企業に比べてはるかに強いものがあります。
特にIT系ベンチャー企業では、年齢にこだわることなく、若い人材にも多くの裁量を与えことがあり、積極的に新規事業・業務に挑戦できる環境が整っています。
このような企業では、自分のアイデアやスキルを直接的に事業に反映できる機会が多く、やりがいを感じやすいことも大きな特徴です。自分のキャリアを幅広く考え、柔軟な視点で企業を選ぶことが、転職の成功につながります。
6. 転職前にマネジメントスキルを上げておく
現職で一定の経験を積んでいる30代以降の転職では、企業から即戦力としての活躍が期待されており、高いマネジメントスキルやプロジェクトリーダーとしての実績が重視されます。
特に「職種は変えず、未経験業界へと転職する」場合には、マネジメントスキルはこれまでの経験を活かしやすい要素です。
「業界は変えず、異なる職種へと転職する」「職種も業界も変えて転職する」場合でも、高いマネジメントスキルがあれば、即戦力として評価されます。
転職前に、プロジェクトマネージャー(PM)の経験を積むなどして、可能な限りマネジメントスキルを高める努力をしておくことは有効です。
7. 転職エージェントによる支援を受ける
未経験での転職活動をスムーズに進めるためには、転職エージェントの支援は欠かせません。
転職エージェントは、転職希望者のスキルや経験にマッチした求人を紹介してくれるプロフェッショナルです。
非公開の求人を多く取り扱っている転職エージェントもあり、一般には募集が行われていない、優良な求人にアクセスできるメリットがあります。
転職エージェントに登録する際には、漫然と選択するのではなく、自身の目指す業界に精通したエージェントを選ぶことが重要です。
特定の業界に特化したエージェントを選ぶことで、最適な求人を紹介してもらえるだけでなく、業界特有の転職ノウハウや最新の市場動向を知ることもできます。
転職エージェントのサービス内容はさまざまですが、書類作成や面接対策に関して具体的なアドバイスをしてくれるところもあります。こうしたサポートを受けることで、自分一人で転職活動を行うよりも成功の確率が高まります。
さらにエージェントは企業との交渉も代行してくれるため、給与や待遇の面で有利な条件を引き出してくれることも期待できます。
未経験の転職でおすすめしたいIT・エンジニア職
第4次産業革命(AIやIoTなどのデジタル技術による産業構造の変化)に伴い、IT化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が加速しています。この流れと慢性的な人材不足から、IT・エンジニア職は未経験者にもおすすめの転職先です。IT・エンジニア職には、ソフトウェアやシステムの開発、設計、運用、保守などを行う職種が含まれ、具体的にはプログラマーやシステムエンジニアなどが該当します。
経済産業省の試算によると、日本国内のIT人材は2030年までに最小で16万人程度、最大で79万人不足するとされています。IT人材の供給と養成は日本において喫緊の課題であり、未経験者でも転職できるチャンスが大いにあります。
さらに、2019年以降のコロナ禍で多くの職種の求人が減少したなか、IT系専門職の求人は大きく伸びています。厚生労働省のデータによると、2019年を100とした場合、IT系専門職の求人は2020年が115.77、2021年は112.01と増加しています。一方、専門職全体の平均は2020年が95.06、2021年が86.50であることから、IT系人材の需要が非常に高いことがわかります。
これらのデータからもわかるように、未経験からの転職を考えているなら、IT・エンジニア職は非常に有力な選択肢です。未経験者でも挑戦しやすく、将来的なキャリアパスも期待できます。スキルを習得するための教育プログラムやオンライン講座も充実しているため、まずは基本的なプログラミングやシステム管理の知識を身につけることをおすすめします。
この記事の寄稿者
転職の成功率は年齢によって大きく異なります。ポテンシャルが重視される20代の転職成功率が高いのに対し、30代・40代になると成功率は下がるものの、実務経験が豊富で高いスキルをもっていれば、希望する企業や業界への転職のチャンスは大いにあります。
- 川口裕也