機械系エンジニア(メカニカルエンジニア)の年収は? 後悔しない転職のリアル
機械系エンジニアは、機械設備の設計と開発だけでなく、運用や管理まで幅広い業務を担当します。本記事では、機械系エンジニアへの転職を検討している方に向けて、仕事内容や平均年収の目安、将来性について詳しく解説します。機械系エンジニアは多彩な業界で活躍できるため、業界による違いを知ることや自身の適性を考えることも大切です。
機械系エンジニア(メカニカルエンジニア)の年収は?
厚生労働省がまとめたデータによると、機械系エンジニアの賞与を含めた平均年収は令和4年時点で600万~650万円となっています。月収に換算すると約50万~54万円、賞与抜きで月給換算すると約30万円と算出されます。
国税庁が公表した「令和4年分 民間給与実態統計調査」によれば、全国の給与所得者の平均年収は458万円でした。そのため、機械系エンジニアの年収は、全国の平均年収よりも142~192万円ほど上回っていることが分かります。このように、機械系エンジニアの収入は他の職種よりも比較的高いと考えられます。
なお、この平均年収は厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」のデータをもとに、機械系エンジニアに該当する職種の平均年収をまとめたものです。機械エンジニアが活躍できる場は幅が広いため、実際は働く業界や職種によって、期待できる年収は異なります。
【職種別】機械系エンジニアの仕事内容と平均年収
上述したように、機械系エンジニアは高収入が期待できる職種です。これから機械系エンジニアを目指す方のなかには、実際にどのような業務を担当するのかよく分からないという方もいるかもしれません。
機械系エンジニアはメカニカルエンジニアとも呼ばれ、機械設備の設計や開発、提案など行い、
個人向けの小さな製品から大規模な工場向けの設備、産業用ロボットまであらゆる機械を作り出します。また、材料や技術などの調達や、開発後の運用と保守メンテナンスも機械系エンジニアの担当業務です。
機械系エンジニアを必要とする業界は、食品業界や建設業界、自動車業界など多岐にわたり、どの業界を選ぶかによっても仕事内容や給与が大きく変化します。
機械設計技術者(機械設計エンジニア)
機械設計技術者は、顧客の要望に応じて機械製品の設計や開発を担います。機械がどのようにして動くのかという仕組みを考えることが主な仕事内容です。仕組みの実現に向けて、必要な資材や技術などをピックアップし、シミュレーションを重ねながら、安全性やコストなどを総合的に判断します。
ひと口に機械と言っても、その種類は多岐にわたります。顧客の要望を実現するためには、材料力学や機械力学、流体力学、熱力学、メカトロニクス、制御工学といった幅広い知識が必要です。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によれば、労働時間は全国平均で165時間、平均年収は606.2万円が目安となっています。また、令和4年度の求人を見ると月額給与の全国平均は27.7万円、全国の有効求人倍率は2.64倍であったこと報告されています。
精密機器技術者
数ある機械のなかでも高い制度を要求される機械類の設計、開発を手掛けるのが精密機械技術者です。一般的に、医療機器やカメラ、時計、測定機器といった精密機器の専門メーカーに就職し、チームで開発に取り組みます。顧客の要望に合わせた設計、CADソフトなども活用しながら強度やコストの計算を行うほか、試作品による試験を繰り返し、実用に耐えられる製品であることに加え量産が可能な精密機器を生み出さなければなりません。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」を見ると、精密機器技術者の労働時間や給与は機械設計技術者と変わらない水準にあります。労働時間は全国平均で165時間、平均年収は606.2万円が目安です。令和4年度の求人における月額給与の全国平均は27.7万円、有効求人倍率の全国平均は2.64倍と報告されています。
自動車技術者(自動車エンジニア)
自動車技術者(自動車エンジニア)は、その名のとおり自動車や自動車部品の製造に特化したエンジニアです。企画、設計、開発から始まり、試作品の実験を繰り返し、新たな自動車製品を生み出します。自動車は最新のテクノロジーを用いるケースも多く、車を量産するうえで新しい技術をどのように取り入れるか考えるのも自動車技術者の役割です。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、自動車技術者の労働時間は平均166時間、平均年収は612.3万円です。令和4年度時点で月額給与の全国平均は28万円、有効求人倍率の全国平均は1.65倍となっています。
産業用ロボット開発技術者
産業用ロボット開発技術者の主な業務内容は、顧客の要望に合わせた産業ロボットの設計と開発です。開発後の実験や試運転なども業務範囲に含まれます。作業を自動化するためのロボットや、危険な作業を代行するためのロボットなど、業界によって多種多様な産業ロボットが必要とされています。既存のロボットを改良するケースもあれば、一から新しいロボットを生み出すケースもあるため、幅広い知識や技術が必要です。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、産業用ロボット開発技術者の労働時間は全国平均で165時間、平均年収の目安を606.2万円としています。また、令和4年度の求人において、月額給与の平均は全国27.7万円、全国の有効求人倍率は2.64倍となっていて、機械設計技術者や精密機器技術者と同水準にあります。
参照元:厚生労働省「job tag」産業用ロボット開発技術者
生産・品質管理技術者
生産・品質管理技術者は、工場で何らかの製品を生産する際、安全で均一な品質を維持しながらどのように量産できるのか考案する仕事です。その名が表しているとおり、工場での生産や品質の管理を担います。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」を見ると、産業用ロボット開発技術者の労働時間は全国平均が166時間、平均年収の目安は644.5万円です。令和4年度の求人において、月額給与の平均は全国29.3万円と他の機械系エンジニアよりも若干高くなっています。また、全国の有効求人倍率は2.39倍であり、機械設計技術者や精密機器技術者と比べて若干低いものの、ほぼ同水準にあります。
「やめとけ」の声も? 機械系エンジニアの将来性
機械系エンジニアは年収も平均より高い水準にあり、有効求人倍率も2倍以上の職種が多くを占めます。機械系エンジニアは必要とされる業界が数多くあり、転職を考えている方にとって有力な候補のひとつとなるはずです。
現在も円安が続いている日本では、製造業が海外への輸出品により大きな利益を得られるチャンスも高まっています。また、平成30年に行われた経済産業省の調査では「5年後技術者が不足すると予想される分野」の1位に機械工学が含まれていました。このような背景からも、機械系エンジニアの需要は今後も増加すると考えられています。
さらに、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」内の「機械設計技術者 産業景況データ」から、令和6年の現在、正社員を中心に年々技術者が不足気味の状況にあることが読み取れます。
世界的にもIoTやAI、ロボット分野の注目を集める昨今、新たに海外進出を考える企業は増加傾向にあるようです。このような状況から、現時点で機械系エンジニアの需要が失われる可能性は考えづらく、将来性の高い職種です。
転職の失敗を防ぐには、業界や適性の検討が重要
将来性の高い職業とされている一方で、経験者から「機械エンジニアはやめとけ」という否定的な声も上がっているようです。その理由の大半は「納期前に残業が多くなる」ことや「会議や折衝など設計以外の業務が多い」こと、また「細かな作業が長時間続く」といった仕事の大変さにあります。また機械系エンジニアの仕事内容は、設計や開発だけではないため、職務範囲の広さにミスマッチを感じる可能性もあります。
どの業界を選ぶかによって将来性も変わってくるため、自身の適性を考えることも非常に重要です。転職する業界を選ぶ際は、今後、縮小が予想される分野でないこともしっかり確認しておきましょう。
一方、これまでの経験で培った専門的なスキルを活かしたい方、新しい技術や知識を身に付けるためコツコツと学ぶのが好きな方は、機械系エンジニアに向いています。半導体ニーズの高いメーカーや、EVへ移行を進めている自動車業界など、機械系エンジニアの需要が高い業界を見極めることもポイントです。
機械系エンジニアで高収入を叶える3つのポイント
機械系エンジニアの平均年収は600~650万円と上述しましたが、この数字はあくまで平均です。実際には400万円台のケースもあれば800万円台や1,000万円と高収入を得ている機械系エンジニアも存在します。キャリアアップを実現に向けて、以下に挙げる3つのポイントを押さえておきましょう。
1. 業務に役立つ関連資格を取得する
スキルアップの一環として業務に役立つ資格を取得しておくと、待遇のアップが見込めるだけでなく、転職先の候補も広がります。例えば、機械系エンジニアの業務に役立つ関連資格には以下のようなものがあります。
【技術士(機械部門)】
技術士は技術士法に基づく国家資格です。公益社団法人日本技術士会によって実施されています。技術士の資格を保有していれば、科学技術に関する深い知識と応用力、倫理を有していると証明できます。業務独占資格ではないものの、いわゆる五大国家資格のひとつとされているため、弁護士や公認会計士などと並び権威のある資格です。
技術士の対応範囲は非常に広く、資格試験では機械部門や船舶・海洋部門、航空・宇宙部門など全部で21の部門があります。二次試験の受験資格は実務経験が条件となっているため、未経験者が受験できるのは一次試験までとなりますが、一次試験合格者も「技術士補」として活躍が可能です。
技術士の資格を取得すると資格手当の対象になることが多く、プロジェクトの技術管理者として起用される可能性も高まります。令和5年度における機械部門・二次試験の合格率は18%と狭き門です。
【機械設計技術者】
機械設計技術者は、一般社団法人 日本機械設計工業会(JMDIA)によって設けられた民間資格です。
機械設計に関する技術が備わっていることを証明できます。
資格試験では、設計管理や環境経営に関する知識をはじめ、機械力学や制御工学、流体・熱工学など幅広い知識を問われます。
1~3級までの資格があり、3級は実務経験のない方でも受験が可能です。
令和5年度実施試験における3級の合格率は約47.1%と、約半数の方が合格している一方で、1級の合格率は約36.4%と難易度は高めとなっていて、合格するには国内でもトップレベルの機械設計に関する知識が必要です。
難易度は高いものの、転職活動で有利になる可能性は高くなります。
【CAD利用技術者】
CAD利用技術者とは、一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)による民間資格を指します。CADシステムに関する知識や技術力の保有を証明するものです。試験は2次元CADと3次元CADに分かれて用意されており、受験者の目的に応じて選択できます。試験の内容は、2~3級が筆記試験のみとなっていて、1級には実技試験が加わり、機械、建築、トレースの各分野からいずれかを受験します。
難難易度の目安は、3級が就学してから3カ月程度の初心者、2級は業務に就いて間もない1年未満の方、1級は1年以上の実務経験がある方です。3次元CAD利用技術者試験2級の合格率は、2023年で約68.35%となっていますが、1級は2023年後期の試験で約25.56%となっていることから難易度の高さがうかがえます。CAD利用技術者の資格取得は、機械設計事務所やメーカーへの転職を希望する方におすすめです。
【機械・プラント製図技能士】
機械・プラント製図技能士は、機械およびプラントの図面を製図するために必要な国家資格です。業務独占資格ではありませんが、名称独占資格となるため、資格保有者のみが機械・プラント製図技能士と名乗ることが認められています。特に、製造設計の分野で重視されている資格です。1~2級の受験資格は実務経験もしくはひとつ下の級の合格が必要ですが、3級は条件がないため誰でも受験可能です。
筆記試験と実技試験に分かれており、実技試験では手書きの製図とCADによる製図の両方が出題されます。合格率は年度によって大きく異なり、低い年では2019年の約25.5%、高い年で翌年2020年の約48.4%と2倍近くの開きが見られます。取得すれば転職時のアピールになるほか、将来的なキャリアアップに役立つはずです。
2. 規模が大きい企業へ転職する
機械系エンジニアの年収は、中小企業よりも大企業のほうが高い傾向にあります。そのため転職により高収入を目指すのであれば、できるだけ従業員が多く、規模の大きな企業をピックアップしてから候補先を絞っていくのがポイントです。また、同じ業界であっても企業によって年収の水準は異なるため、転職先候補の企業の年収が現職の年収を上回るかどうかも確認するようにしましょう。
3. より好待遇が期待できる業界を選ぶ
機械系エンジニアが活躍している業界は幅広く、業界ごとに待遇差があるのも事実です。同じような業務内容や役割を担当する仕事であっても、業界の動向や景気などの要素によって年収が変化することも珍しくありません。高収入を得るためには、できるだけ好調な業界を選んで好待遇を狙うのもポイントです。
例えば、令和6年の現在は、建設業界よりも食品業界や自動車業界が好調となっているため、これらの業界に携わっている機械系エンジニアのほうが年収は高い傾向があります。このように、転職先を探す際には、働きたい業界の動向を確認することも大切です。
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この記事の寄稿者
機械系エンジニアは平均より年収水準が高く、幅広い業界で必要とされるため、将来性の高い職種です。業界によっても仕事内容や年収、必要なスキルが大きく変化するため、転職活動には市場調査や企業研究が欠かせません。エンジニアに特化した転職支援サービス「メイテックネクスト」なら、自身にマッチした企業が見つかるはずです。
- 宮崎 純一