機械設計エンジニアに向いている人の特徴|年収・必要なスキル・やりがいも紹介
熟練した技術者による「ものづくり」は、日本の伝統的な強みであり、生活必需品の発展を支えてきました。その中で、ものづくりの企画・設計を担当するのが機械設計エンジニアの仕事です。本記事では、機械設計エンジニアに向いている人の特徴について解説します。また、必要なスキルや年収、やりがいなど、就職時に気になるポイントについても詳しく掘り下げていきます。
機械設計とは?
機械設計とは、家電製品や自動車など、あらゆる機械の設計を指します。機械設計エンジニアの役割は、構造や機能、耐久性、安全性などを考慮しながら、機械が完成するまでの設計書を作成することです。
機械設計エンジニアは、勤務先によって設計する機械の種類や範囲が異なりますが、一般的には以下の流れに沿って進めます。まず、クライアントの要望をヒアリングしてコンセプトをまとめ、基本設計でシミュレーションを行います。次に、詳細設計で内容を詰め、試作を繰り返して設計を最適化します。最終的に、最終設計を経て製品の製造へとつなげます。
機械設計エンジニアに向いている人の特徴
機械設計エンジニアへの転職を検討する際、自分に務まるかどうか不安に感じるかもしれません。その不安を解消するために、以下より求められる適性について解説します。
ものづくりに興味がある
ものづくりの魅力は、自分が設計した製品が完成し、それが実際に世の中で使われることに大きな喜びを感じる点です。ものづくりが好きな人は、その情熱が高いモチベーションや原動力となり、困難なプロジェクトにも積極的に取り組めます。
また、創造力と創意工夫によって新しい設計アイデアを生み出すことが得意な人は、実践的な知識と経験を活かして、理論と実際の製造可能性を判断する能力を持っています。ただし、実際の組み立て作業は少ないため、設計そのものに魅力を感じることが重要です。
地道で細かい作業が得意
設計ではミリ単位のズレや見落としが、製品の品質や性能に大きな影響を与える可能性があります。細心の注意を払い、ミリ単位の精度を保ちながら丁寧な作業をこなすことが重要です。そのため、機械設計エンジニアには地道で細かい作業が得意な人が向いています。
さらに、試作の繰り返しや修正を行うことが多いため、根気強く作業を続けられる精神力も必要です。一方で、細かい作業が苦手な人には、設計作業がストレスや苦痛に感じられることがあるかもしれません。
PC作業が好き
機械設計エンジニアは、設計作業の大部分をPC上で行います。図面の作成や修正、部品の検討、シミュレーションの実行など、多くの作業でPCソフトを使用します。そのため、PC作業が得意な人は効率的に仕事を進めることができます。
また、設計作業だけではなく、報告書の作成や文書処理、プロジェクト管理、データ管理も行うため、これらの作業に必要なPCスキルも欠かせません。そのため、PCの扱いに慣れていない人は、転職後に苦戦する可能性があります。
コミュニケーション能力がある
機械設計の作業自体は1人で行うことが多いですが、設計を始める前にはクライアントとの打ち合わせや、製造部門・管理部門・他のエンジニアとの連携が必要です。
良好なコミュニケーションを築くことで、プロジェクトの目標達成や問題解決がスムーズになり、チーム全体の生産性が向上します。そのため、相手の話を丁寧に聞き取り、自分の考えや意見を適切に述べられる人は現場で重宝されます。
向上心があって学ぶのが好き
機械設計の分野では、技術の発展が日々進んでいます。最新の技術が出てくるたびに学習や習得を行うため、それが苦にならない精神力が重要です。
例えば、AIやIoT、XRなどの最先端技術の導入など、機械設計に関わる領域は常に変化しています。したがって、常に最新の情報をキャッチアップし、自分の知識をアップデートしていく向上心が求められます。
機械設計エンジニアに必要なスキルや知識
以下では、転職において有利になり、職場で活躍するために習得すべきスキルや知識を解説します。
4大力学の知識
「4大力学」とは、「熱力学」「機械力学」「材料力学」「流体力学」を指します。これらの知識は、設計の各段階で必要な評価や分析を行い、信頼性と効率性の高い製品を開発するための基礎です。
例えば、潤滑技術や油圧機器などの機器、鋳造や射出成形には、流体の力の釣り合いや運動を解析する流体力学の知識が欠かせません。自動車のエンジンは、ガソリンの燃焼により発生する熱によって、力学的エネルギーを生み出す熱力学の原理を応用しています。
また、材料力学は引張・圧縮・せん断・曲げ・ねじりの力によって、設計した機械がどの程度の荷重を受けるのかを考慮して完成させるための道筋です。機械の動作により生じる機械力学を基盤にして、機械に生じる力の大きさや方向を定め、機械の変形量や破損の危険性などをチェックします。
設計する対象によって、必要な力学の知識が変わるので、力学の知識が不足している場合は、その都度学習する必要があります。したがって、設計作業をスムーズに進めるために、前もって習得しておくことが望ましいです。
PCスキル
昨今の機械設計において、紙にペンを走らせて設計図を作成することは少なくなり、ほとんどが「CAD(Computer-Aided Design)」を使用しています。CADは設計図やモデルを作成するソフトで、2次元と3次元のどちらにも対応しています。
「CAD利用技術者試験」という検定試験も設けられているので、受験・取得することをおすすめします。取得すると設計スキルの証明となり、転職やキャリアアップに有利です。
他に、設計のシミュレーションや解析を行う「CAE(Computer-Aided Engineering)」や、設計データをもとに製造工程を自動化する「CAM(Computer-Aided Manufacturing)」の使用頻度も高いです。これらのツールを使いこなすことで、設計の精度を高めたり、効率的な製造プロセスを構築したりできます。
さらに、3Dプリンターを使用して試作品を作る場合もあるため、その知識も備わっていることが望ましいです。3Dプリンターの操作や3Dデータの作成に関するスキルは、試作段階での迅速な検証や改良に役立ちます。
設計以外にも、文書作成に使用するWordやデータ整理と分析に使用するExcel、プレゼンテーション作成に使用するPowerPointなどの一般的なPCスキルも前提として必要です。これらのソフトウェアは、設計レポートの作成やプロジェクトの進捗管理、クライアントやチームメンバーへのプレゼンテーションに欠かせません。したがって、機械設計エンジニアとして成功するためには、これらのPCスキルを総合的に習得することが求められます。
コミュニケーションスキル
上述した機械設計エンジニアに向いている人の特徴にある通り、優秀なコミュニケーションスキルは、クライアントへとの打ち合わせや他部門・他のエンジニアとの連携などに有効です。設計段階での情報共有や意思疎通の円滑化を助け、誤解やミスを防ぐことにも役立ちます。
コミュニケーションスキルが備わっていないと、プレゼンテーションなどで、自分の設計やアイデアをわかりやすく説明したり、関係者を説得したりすることが難しいです。設計の意図や技術的な選択について説明する場面は多く、上司やクライアント、チームメンバーに対して、論理的かつ簡潔に自分の考えや意見を伝える能力が求められます。これにより、プロジェクトの進行がスムーズになり、誤解や伝達ミスが減少します。
コミュニケーションが苦手な人は、情報共有や意思疎通で苦労するかもしれませんが、経験を積むことで改善する可能性もあります。
機械設計エンジニアの平均年収
厚生労働省の職業情報提供サイト「 job tag」によると、機械設計技術者の平均年収(令和4年)は606.2万円です。これは、製造業や建設業の他の職種や全産業の平均よりも高い水準です。このように年収が高い理由は、機械設計技術者に高度なスキルが求められるためです。
さらに、機械設計エンジニアの年収は、資格や経験によって大きく変わります。機械設計の分野で認定された資格は、専門知識を証明するもので、取得しておくと企業からの評価が高まります。
また、設計ソフトウェアのスキルを向上させたり、最新の技術やトレンドに対応したりすることで、技術者としての市場価値が上がり、年収アップにつながります。
キャリアアップのためには、現在の職場で昇進を目指すだけでなく、年収の高い企業に転職することもひとつの方法です。特に、大手企業や先進的な技術を持つ企業では、高収入が期待できることがあります。
(引用元:厚生労働省「機械設計技術者-職業詳細」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/262)
機械設計エンジニアのやりがい
自分が設計した機械が製品化され、実際に世の中で活躍しているのを見ると、喜びややりがいを感じられます。また、自分のアイデアや創造性が採用されることも大きな達成感につながります。新しい製品のコンセプトやデザインを考え、製品が完成して市場に出ると、自分の職業に誇りを持てます。
さらに、機械設計エンジニアの仕事は、常に新しい課題に取り組むことが求められます。最新の技術や素材の導入、製品の性能向上など、技術の発展や市場の変化に対応するために、自分の知識やスキルを磨く必要があります。このような挑戦の連続が、日々の仕事に刺激とやりがいを与えてくれます。
機械設計エンジニアがきついとされる理由
機械設計エンジニアには多くのやりがいがありますが、以下の理由から転職をためらう人もいます。
納期に追われ残業が多くなる場合がある
機械設計の仕事では、決められた納期までの納品が必要です。途中で予期せぬトラブルが発生したり、クライアントからの追加要件があったりすると、作業が追いつかず、納期に間に合わせるために残業や休日出勤が増えることがあります。
ただし、現在は働き方改革によって労働条件が見直され、ワークライフバランスが重視される傾向にあります。したがって、企業ごとに労働環境が異なることを念頭に置きましょう。
比較的プレッシャーが大きくなりやすい
機械設計は数ミリ単位で細々と行う作業が多く、小さなミスや見落としなどが、後になって製品の技術面に大きな影響を及ぼすため、プレッシャーが大きい職業です。
さらに、「納期に追われる中で、迅速に作業を終わらせなければならない」「激しい競争激化の中で、高性能な製品を開発しなければならない」などのプレッシャーを感じるかもしれません。しかし、経験を積むことで、こうしたプレッシャーに打ち勝つスキルが身に付いていきます。
新しい知識や技術の習得が必要である
機械設計エンジニアは、常に最新の知識や技術の習得が求められます。最新の素材や製造プロセス、設計手法などの登場やマーケティングの変化、法規制の変更などに対応するため、その都度学習して順応することが必要です。
学習が苦手な人にとっては、これに追いつくのが不安に感じられるかもしれません。しかし、知的探究心が旺盛な人や学習が好きな人にとっては、これは魅力的なチャレンジとなります。
機械設計エンジニアの仕事は未経験からでも挑戦できる?
機械設計エンジニアは、未経験からでも男女問わず挑戦できる仕事です。確かに難易度が高い職種ではありますが、多くの企業が新人を一から育成するプログラムを用意しています。インターンシップや研修を通じて実務経験を積みながら、職場で必要なスキルや知識を学習する機会が提供されているため、未経験者でも取り組みやすいです。
転職する前に、機械設計に関する基本的な知識やスキルを習得しておくことが大切です。専門学校や大学などで機械工学を専攻したり、オンラインコースや書籍などで独学したりすることをおすすめします。特にCADの操作ができることは、転職活動において大きなアドバンテージとなります。
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この記事の寄稿者
機械設計エンジニアは、ものづくりに興味があり、細かい作業が得意な人に適した職業です。必要な知識とスキルを身に付ければ、未経験でもやりがいを感じながら働けます。時にはきつく感じることもありますが、経験を積むことで解消されます。転職を考えている方は、ぜひ挑戦してみてください。
- 宮崎 純一