電子機器開発・設計を行う「電気・電子系エンジニア」とは?仕事内容を解説
電気・電子系エンジニアは、最新技術を活用して電子機器を開発・設計・運用する人気の職種です。本記事では同エンジニア職の具体的な仕事内容や仕事のやりがい、向いている人や転職活動を進めるうえで有利な資格など、転職活動に有益な情報を紹介します。
電子機器開発・設計を行う「電気・電子系エンジニア」とは?
電気・電子系エンジニアは、電子機器や電子部品を用いた製品の設計・開発・製造・修理などの業務に携わる職種です。電気・電子専門のエンジニアとして、電子機器に関する深い知識や高度なスキルを持っていることが特徴です。
パソコンやスマートフォンなどの電子機器のほか、一般家電をはじめとして電子部品が用いられている製品は数多くあります。上述した電子機器や家電製品のほかにも、自動車から産業用機械、医療用機器などまで、電気・電子系エンジニアが対象とする製品は多岐にわたります。
ITエンジニアや機械系エンジニアとの違い
電子・電気系エンジニアと似た職種にITエンジニアや機械系エンジニアがあり、なかにはこれらを混同している方がいるかもしれません。これらの職種と電子回路の設計・開発を中心に行う電子・電気系エンジニアとは異なります。
<h4>ITエンジニアとの違い</h4>
ITエンジニアの業務対象の中心は情報技術です。コンピューターやネットワークを活用して、システムを設計したり、開発・運用を行ったりする役割を担っています。ITエンジニアはさらに、
・システムエンジニアやブリッジエンジニア
・Webエンジニア(ネットワークエンジニアやインフラエンジニア、データベースエンジニアなど)
・セールスエンジニアやサポートエンジニアなど
などに細分化できます。上述した通り、いずれの職種も業務の中心はシステムの設計・開発・運用のいずれかです。電気・電子系エンジニアも製品の開発・設計・構築・運用業務を行いますが、対象としているのは主に機器に組み込まれる回路などです。
【機械系エンジニアとの違い】
機械系エンジニアは、産業用機械やプラント設備などの設計・開発・製造・設置・運用・保守を業務領域としています。飛行機や自動車、ロケットなどの機械本体の設計・製造・運用・保守なども機械系エンジニアが行う仕事のひとつです。対象とする機械や設備の機能性や安全性を維持・向上させるために、機械系エンジニアは機械の構造を深く理解したうえで業務を進める必要があります。
設計業務に関して、電気・電子系エンジニア、ITエンジニア、機械系エンジニアの関係性を簡潔に整理すると、
・電気・電子系エンジニア:機械に組み込まれる電子回路などを設計する
・ITエンジニア:機械本体や組み込み電子回路などを動作させるソフトウェアを設計する
・機械系エンジニア:機械本体を設計する
となります。
電気・電子系エンジニアの仕事内容
ここでは、電気・電子系エンジニアの具体的な仕事内容を、
・調査・ヒアリング
・開発計画・設計
・開発・検査・テスト
・保守
の各段階に分け、順に追って解説します。
調査・ヒアリング
発注された電気・電子機器を製造するためにはまず、顧客に対してしっかりとヒアリングを行い、要望の詳細を把握する必要があります。顧客のニーズを具体的かつ丁寧にヒアリングして「どのような機器や設備が必要なのか」をすり合わせて、成果物に反映させることが求められます。調査・ヒアリング業務が成功したか否かは、顧客の満足度で評価されます。本業務においては、顧客との密接なコミュニケーションを通じて、製品開発の方向性を明確にすることが重要です。
開発計画・設計
顧客の要望を反映させて、製品の開発計画を立てることが次のステップです。ここで立てた計画に沿って、電気・電子機器の設計を進めていきます。本業務においては、図面を作成して、詳細な設計書を作成することが重要な作業です。電気・電子機器の動きや操作性、コスト面、安全性などを十分に検討したうえで、最適な設計を行うことが求められます。
開発・検査・テスト
次に行う業務が、設計書の仕様をもとに実際の開発作業に取りかかることです。必要な資材や機材を調達し、製品を製造して、その後に品質検査などを行います。これらの業務には電気・電子系エンジニアも立ち会いますが、この際、万が一、予期せぬトラブルが発生した場合にも、迅速に対応できる体制を整えておく必要があります。開発業務は、ほかの分野のエンジニアとも連携をとりながら進めていきます。製品の完成後は機能性や信頼性に問題はないかを確認するために、出荷前検査を実施します。納品先の現場への設置後は設備や配線などに異常がないか、顧客の要望通りに稼働しているかなどを調査・確認するために試運転を行います。
保守
製品を納品したからといって、電気・電子系エンジニアの仕事は終わりではありません。製品の運用状況を確認し、メンテナンスを行う必要があります。納品した製品を長期にわたって安全に使用してもらうためには、故障時や異常時の対応、定期的な保守などは欠かせません。製品に対する信頼性は企業の信頼性に直結するため、電気・電子系エンジニアの担う保守業務は重要です。保守の際には顧客から使用状況や要望などをフィードバックしてもらい、次の製品開発に活かしていきます。
電気・電子系エンジニアに向いている人
業務内容の特性上、電気・電子系エンジニアに向いている人とは、
・技術に関して学び続けられる人
・電気工学や電子工学の知識がある人
・コミュニケーション能力がある人
などです。ここでは、上記で挙げた3例について見ていきます。
技術に関して学び続けられる人
電気・電子系エンジニアの業務は、日々進化する先端技術に常に対応していく必要があります。スマートフォンやタブレット、家電製品、自動車など、私たちの生活に欠かせない電気・電子機器の開発・設計に携わっているため、最新の技術動向を把握し続けることが求められます。つまり、電気・電子系エンジニアには最新技術に関する情報収集を積極的に行い、新しい知識やスキルを吸収して、自らの専門性を高めていく意欲のある人が向いています。技術の進化に柔軟に対応していくためには、好奇心や探究心を持ち続けることが必要です。
電気工学や電子工学の知識がある人
電気・電子系エンジニアの業務は非常に専門性が高く、電気工学や電子工学の知識が必要です。回路設計や製品開発を行うためには、さらに数学・物理学・化学などの基礎科目に対する造詣も求められます。学生時代から理数系の科目が好きな人や優秀な成績を修めているような人は、電気・電子系エンジニアへの適性があると考えられます。業務を円滑に進めるには、理数系の知識に加え、論理的な思考が重要です。普段から物事をロジカルに考える姿勢は電気・電子系エンジニアの業務にプラスとなります。
コミュニケーション能力がある人
電気・電子系エンジニアの業務領域は広く、ひとりで対応することはできません。顧客の要望を理解して、仕様に沿った製品を開発・製造・保守するためには、チームメンバーなどと協力しながら進めていく必要があります。その際に求められるのは、相手の意図を的確に把握し、自身の考えをわかりやすく伝える「聞く力」「伝える力」です。プロジェクトの進捗状況を把握し、チームの状態を読み取る「空気を読む力」も欠かせない力として挙げられるかもしれません。個人として高いスキルや知識を持っていることはもちろん重要ですが、顧客や自社・他社従業員などとのコミュニケーション能力に長けた人こそ、電気・電子系エンジニアとして活躍できる可能性が高いと考えられます。エンジニアは顧客や関係者との折衝、プレゼンテーション、ミーティングなどで、さまざまな人と関わる機会が多くあります。上述した論理的思考とコミュニケーション能力とを磨くことで、業務を円滑に進められるようになります。
電気・電子系エンジニアに転職するメリット
電気・電子系エンジニアの仕事には多くの魅力ややりがいがありますが、この職種に転職することによって得られるメリットとしては例えば、
・最新技術に触れられる
・仕事の成果を身近なかたちで感じられる
といったことが挙げられます。
最新技術に触れられる
IoT(Internet of Things:さまざまな「モノ」がインターネットに接続され、それぞれの間で制御する仕組みのこと)や人工知能(AI)、自動運転、第5世代移動通信システム(5G)など、電気・電子業界では日々新しい技術を取り入れた製品が開発され、実際に市場に投入されています。電気・電子系エンジニアとして働くことによって、これらの最新技術に触れることができ、世界に先駆けた製品の開発に携わる機会が得られます。最新技術の動向を把握して学ぶことは、自身のスキルを向上させることであり、そこにエンジニアとしての成長を感じる人も多いはずです。時代の先端を行く、高度な仕事に携わっているという自負は自己肯定感を高めることにもつながります。
仕事の成果を身近なかたちで感じられる
電気・電子系エンジニアには「ものづくりが好き」という人が多くいます。自分が設計・開発・製造などに携わった製品が世の中に出回り、実際に使用している一般消費者などの声を聞くことは、エンジニアとして大きな達成感や喜びが感じられる瞬間です。何度も試作を繰り返して苦労を重ねた製品であればあるほど、その感動はひとしおであるはずです。グローバル展開している企業に勤務しているエンジニアであれば、世界中の消費者に製品が届くため、社会貢献度はより一層強く感じられるかもしれません。消費者の笑顔や感謝の言葉は、電気・電子系エンジニアの仕事をするうえでの大きな原動力となります。自分の仕事を誇りに思えるこうした瞬間を味わえることが、電気・電子系エンジニアの仕事の大きな魅力のひとつです。
電気・電子エンジニアへの転職で役立つ資格
電気・電子系エンジニアへの転職を検討しているのであれば、保有していることで転職活動を有利に進められる資格があります。ここでは、
・電気主任技術者
・電気工事士
について紹介します。これらの資格保有者に対して、資格手当を支給している企業もあり、転職後も優遇される可能性があります。
電気主任技術者
電気主任技術者は電気事業法にもとづく国家資格であり、一般財団法人電気技術者試験センターが実施しています。資格保有者は、発電所や変電所、工場、ビルなどの電気設備の保安監督を担当することが可能な電気の専門家であることを証明できます。電気事業法では、事業用電気工作物を有する企業に対して、電気主任技術者を選任することが義務付けられており、電気・電子系エンジニアが設計・開発した電気設備は、電気主任技術者によって適切に保安・保守が行われなければなりません。本資格は電子機器業界だけでなく、電気設備を有する多くの企業で高い需要があります。
資格の詳細や試験内容は以下の通りです。
(資格の種類)
第一種電気主任技術者:すべての事業用電気工作物を取り扱えます
第二種電気主任技術者:取扱対象が電圧17万ボルト未満の工作物に限定されます
第三種電気主任技術者:取扱対象が電圧5万ボルト未満の工作物に限定されます
(試験内容)
・第一種と第二種は1次試験(理論・電力・機械・法規の4科目)と2次試験(電力・管理、機械・制御の2科目)の2段階
・第三種は1次試験のみ
試験は第一種、第二種が年1回、第三種が年に2回実施されます。いずれも筆記試験のみで、実技試験はありません。1次試験は科目別合格制のため、3年以内に1科目ずつ合格していくことも可能です。2次試験は不合格であっても、1次試験が合格していれば次年度は1次試験が免除されます。令和5年度(2023年度)の合格率は第一種が17.9%、第二種が17.7%、第三種の上期が16.6%でした。
参照元:一般社団法人 電気技術者試験センター 令和5年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について
参照元:一般社団法人 電気技術者試験センター 令和 5 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について
電気工事士
電気工事士は、電気工事士法にもとづく国家資格であり、電気主任技術者と同じく一般財団法人電気技術者試験センターが実施しています。電気設備の工事や取り扱いに必要な資格で、無資格者が電気工事を行うことは禁止されています。有資格者であれば、電気・電子系エンジニアが設計した電気設備の回路や製造仕様をもとに、実際の電気設備の設置や配線工事、点検や修理などのメンテナンスを行えます。電子機器業界に限らず、電気工事を施行する企業では重宝される資格であり、転職活動にも有利です。資格の詳細や試験内容は以下の通りです。
(資格の種類)
第一種電気工事士:第二種の範囲+最大電力500kW未満の工場、ビルなどの工事が可能
第二種電気工事士:工事対象が一般住宅、小規模事業所、家庭用太陽発電設備などの600V以下で受電する設備に限定されます
(試験内容)
第一種、第二種ともに学科試験(筆記またはOBT方式)および技能試験があり、資格を取得するには両方に合格する必要があります。いずれも年に2回実施されます(第一種は従来、年1回でしたが、2024年度から変更されました)。
令和5年度の合格率は第一種の学科が61.63%、技能が60.57%、第二種の学科が59.43%、技能が71.06%でした。
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この記事の寄稿者
電気・電子系エンジニアは、電子機器や電子部品を用いた製品の設計・開発・製造・修理などの業務に携わる職種であり、電子機器に関する深い知識や高度なスキルが求められます。この職種に転職することによって、最新技術に触れられる、仕事の成果を身近なかたちで感じられるといったメリットが得られることは非常に魅力的です。転職活動をスムーズに進めるためには、エンジニアの転職に特化した「メイテックネクスト」をぜひご活用ください。技術知識に精通したコンサルタントが、キャリアアップを強力にサポートいたします。
- 香川 恵