建設機械施工管理技士とは? 資格の概要・取得によるメリット
本記事では、建設機械施工管理技士の資格を取得しようと考えている方向けに、建設機械施工管理技士の概要や検定試験の詳細、土木施工管理技士との違い、資格を取得するメリットなどについて解説します。
建設機械施工管理技士とは?
建設機械施工管理技士とは、建設業法にもとづき、一般社団法人日本建設機械施工協会が実施している資格試験です。土木や舗装、とび・土工工事など建設機械を用いた工事従事者の技術向上を目的に実施されている試験で、1級と2級に分かれています。
1級と2級、どちらも第一次検定と第二次検定で構成されている点が特徴です。いずれの級も、第二次検定は筆記と実技試験があります。
なお、令和2年度までは1級と2級ともに、学科試験と実地試験に合格すれば建設機械施工管理技士の資格を取得できました。
しかし、建設業法が改正され、令和3年度からは1級・2級ともに第一次検定合格者は建設機械施工管理技士補、第二次検定の合格者は建設機械施工管理技士の称号を得られるようになりました。
また、試験合格者は建設業許可に必要な有資格者になることができ、現場への配置が求められる主任技術者および監理技術者の資格が付与されます。
参照元:一般社団法人日本建設機械施工協会 令和6年度1、2級 「受検の手引」
機械施工管理技士と土木施工管理技士の違い
建設機械施工管理技士と混同されやすい資格として、土木施工管理技士が挙げられます。どちらも施工管理技士の国家資格であるものの、それぞれ携わる工事の種類が異なります。
土木施工管理技士は、土木工事における進捗や安全管理に携わる職種、資格です。
実際の業務領域は広く、ほかにも品質管理や原価管理、施工計画の作成などにも携わります。
また、対応可能な工事の種類も幅広く、道路工事や河川工事、橋梁工事、上下水道工事、ダム工事、土地区画整理工事と多岐にわたります。
一方、建設機械施工管理技士は建設機械を用いた工事の品質や安全管理に携わる際に必要な資格です。
工事の規模によっては、当該資格の取得者を常駐させる決まりもあります。
なお、当該資格は種別が細かく分類されており、それぞれ対応できる業務や対象となる建設機械が異なる点が特徴です。
参照元:一般財団法人 全国建設研修センター「令和6年度1級土木施工管理技術検定第一次検定受検の手引」
建設機械施工管理技士の試験内容
1級と2級、どちらも第一次検定は四者択一式・マークシート方式で実施されます。第二次検定の筆記試験は1級が記述解答方式、2級は四者択一式・マークシート方式です。実技では実際の建設機械を用いた試験が行われます。
建設機械施工管理技士の試験日
試験は年に一度しか実施されないため、不合格になるとまた1年待たなければなりません。
受検を検討しているのなら、万全の準備を整えたうえで挑みましょう。
令和7年度試験のスケジュールはまだ発表されていませんが、令和6年については、1級と2級の第一次検定、第二次検定の筆記試験が6月16日に行われました。
第二次検定の実技試験は令和6年8月下旬~9月の中旬、合格発表は11月18日の予定です。
令和6年度試験の受検申し込みは2月15日に開始され、期限は第一次検定が4月5日まで、第二次検定は3月29日まででした。
令和7年度試験を受検予定の方は、最新情報を確認し、遅れないように申し込みしましょう。
建設機械施工管理技士の合格率
日本建設機械施工協会の発表によると、令和5年度における建設機械施工管理技士試験の合格率は以下のとおりです。
【第一次検定】
1級:受検者2,397人、合格者721人、合格率30.1%
2級:受検者6,345人、合格者2,952人、合格率46.5%
【第二次検定】
1級:受検者925人、合格者564人、合格率61.0%
2級:受検者4,082人、合格者3,022人、合格率74.0%
※参照:一般社団法人日本建設機械施工協会|令和5年度1、2級建設機械施工管理技術検定【第一次検定】の合格発表について
※参照:一般社団法人日本建設機械施工協会|令和5年度1・2級建設機械施工管理第二次検定の合格発表について
1級・2級ともに合格率は決して高いとは言えないため、試験範囲をくまなく学習したうえで臨む必要があります。
試験に合格するための学習は独学でも可能です。建設機械施工管理技士試験を対象としたテキストや過去問題集が市販されているので活用しましょう。すき間時間を有効活用して勉強したいのなら、補助的なツールとしてアプリを活用するのもひとつの方法です。
過去問をスマートフォンで解けるアプリをインストールしておけば暇を見つけて学習できます。
そのほか、効率よく勉強したい、正確な知識を身につけたいと考えるのなら、通信講座やeラーニング講座などの利用も有効です。
実技での使用機械
建設機械施工管理技士の資格は、対応できる機械によって第1種から第6種に分類されています。そのため、どの種別を選ぶかによって、実技での使用機械が変わります。
第1種 トラクターやブルドーザー、ショベル、モーター・スクレーパーなどトラクター系の建設機械
第2種 バックホウやパワーショベル、クラムシェル、ドラグラインなどショベル系建設機械
第3種 モーター・グレーダー
第4種 ロード・ローラーやタイヤ・ローラー、振動ローラーなど、締め固めに使用する建設機械
第5種 アスファルト・フィニッシャーやアスファルト・プラント、コンクリート・フィニッシャー、コンクリート・スプレッダー、アスファルト・デストリビューター、コンクリート表面仕上機など舗装用建設機械
第6種 くい打機やくい抜機、アースオーガなどの基礎工事用建設機械
建設機械施工管理技士の受検資格
1級と2級とでは受検資格が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、施行管理技術検定の受検資格が改正され、令和6年度から適用されています。
旧受検資格での受検も可能ですが、詳しくは一般社団法人日本建設機械施工協会の公式サイトから、「受検の手引」にアクセスし確認してください。
一般社団法人日本建設機械施工協会|令和6年度1、2級 「受検の手引」
【1級の受検資格】
改正後の1級第一次検定の受検資格は、受検年度末に満19歳以上の者です。1級第二次検定を受けるには、1級第一次検定に合格していることが前提で、なおかつ1級第一次検定や2級第二次検定の合格後に所定の実務年数を満たさなくてはなりません。
上記の条件を満たさない場合でも、経過措置があるため旧受検資格での受検が可能です。
旧受検資格では、1級第一次検定に合格しており、学歴や保有資格に応じた実務経験年数を満たしていれば受検できます。
なお、建設機械施工に携わる実務経験でないと、年数にカウントできないため注意が必要です。
【2級の受検資格】
改正後の2級第一次検定の受検資格は、受検年度末時点における年齢が17歳以上の者です。
第二次検定の受検資格は、以下のいずれかに該当する者です。
・1級第一次検定に合格したあと、受検種別に関する施工管理の実務経験が1年以上ある者
・2級第一次検定に合格したあと、受検種別に関する施工管理の実務経験が2年以上の者
・2級第一次検定に合格した者であって、種別に関する建設機械を操作して建設工事を施工した経験が6年以上の者
なお、2級の試験も旧受検資格で受検できます。旧受検資格は、令和3年度からの2級第一次検定もしくは平成28年度から令和2年度までの学科試験に合格しており、学歴に応じた実務経験を有する者です。
1級建設機械施工管理技士と2級建設機械施工管理技士の違い
1級と2級、どちらでも携わる業務に大きな違いはありません。
ただ、1級と2級とでは現場における権限の範囲が大きく異なるうえに、携われる工事にも違いがあります。
2級は、施主から直接請け負う工事の金額が1件あたり4,500万円未満の一般建設業でしか主任技術者、監理技術者になれませんが、1級は4,500万円以上の下請契約を締結する特定建設業にも携われます。
また、扱える建設機械の数にも違いがある点に注意が必要です。2級は、6つある種別のうち、試験で選択した種類の機械しか扱えません。たとえば、第1種のブルドーザー系機械と第2種の油圧ショベル系機械を選んだのなら、第3種のモーター・グレーダーや第6種のアースオーガなどは扱えません。一方、1級なら6種別すべての建設機械を扱えます。
建設機械施工管理技士を取得するメリット
建設機械施工管理技士の資格を取得するには、相応の時間を割いて正しい知識を身につけなくてはなりません。
働きながら資格取得を目指すのは大変なことではあるものの、取得によって得られるメリットは多数あります。
昇進や昇給につながる可能性がある
建設現場には、主任技術者や監理技術者などの配置が法律で義務づけられています。
主任技術者は、工事の規模にかかわらずあらゆる建設現場への配置が義務づけられており、直接工事を請け負うケースにおいて4,500万円以上の下請契約を結ぶ特定建設業の場合には監理技術者を配置しなくてはなりません。
そして、主任技術者や監理技術者として現場を管理、監督するには建設機械施工管理技士の資格が必要です。
このように、当該資格は建設業界で必須の資格であるため、取得によって昇進や昇給につながる可能性があります。とくに1級の資格保持者がいれば企業はより多くの現場で建設工事を行えるため、資格手当を支給するケースも珍しくありません。
技能講習・運転技能講習で受講が免除されるものがある
建設機械施工管理技士の資格取得によって、厚生労働省が実施している各種技能講習の一部、もしくはすべてが免除されます。
たとえば、1級なら締め固め用や基礎工事用など車両系建設機械の技能講習が免除される点がメリットです。
また、労働安全衛生法で定められた各種運転技能講習においても、一部もしくはすべての受講が免除されます。
技能講習の種類には、整地・運搬・積み込み用および掘削用運転技能講習をはじめ、基礎工事用運転技能講習、解体用運転技能講習、不整地運搬車運転技能講習などがあります。
受講を免除されることで時間とコストの大幅な削減が可能です。
転職で有利になる可能性がある
建設業界は慢性的な人手不足に陥っていることもあり、優秀な人材や有資格者を頻繁に募集している企業も少なくありません。
建設機械施工管理技士の資格を取得していれば、建設機械を用いた建設現場の品質、安全管理に関する一定の知識、技術を有していると判断されます。
また、有資格者のみを募集しているケースもあります。
たとえば、事業の拡大に伴い営業所を増やしたため、より多くの主任技術者や監理技術者が必要になり、有資格者を募るケースです。有資格者はよりよい条件で募集をかけている企業も少なくありません。
理想的な条件で転職を希望するのなら、取得を視野に入れてみましょう。
この記事の寄稿者
建設機械施工管理技士は、ブルドーザーやパワーショベルなど各種の建設機械を用いる現場の安全・品質管理などに携われる資格です。建設業界に欠かせない資格であり、企業からのニーズも高いことから有利な条件で転職を成功させることも可能です。
この機会に、取得を検討してみてはいかがでしょうか。
- 鈴木 翔太