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【SCSK×ホンダ】ソフトウェアがもたらす自動車業界への影響と重要性とは?~提携の狙いと積極採用の背景を伺いました

【SCSK×ホンダ】ソフトウェアがもたらす自動車業界への影響と重要性とは?~提携の狙いと積極採用の背景を伺いました

SCSK株式会社(以下SCSK)は2023年7月7日、本田技研工業株式会社(以下ホンダ)と「ソフトウェア開発領域における戦略的パートナーシップに関する契約」の覚書を締結しました。

その背景には、自動車業界が直面する技術的な課題、特に 「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)」へ対応のため、自動車開発におけるソフトウェアの重要性がかつてないほど高まっている状況があります。

「Software Defined Mobility(SDM)」と呼ばれる新たな時代に向け、この提携によって、両社は2030年に1000人規模となるモビリティエンジニア体制の構築を目標としています。

今回はこのホンダとの戦略的パートナーシップについて、SCSKモビリティ事業グループ モビリティシステム第一事業本部 システム第三部 部長の鈴木 慎志様にお話を伺いました。

<登壇者略歴>

<登壇者略歴>

SCSKモビリティ事業グループ モビリティシステム第一事業本部 システム第三部 部長 鈴木 慎志様

・2000年~2009年:技術開発系組織に所属。通信業者を中心としたITインフラ構築案件、技術調査等を実施。プログラミング言語、設計手法を中心とした、社内外の技術研修の講師・スタッフを担当。

・2010年~2012年:管理系スタッフ部門に所属。事業推進、計画達成に対する各種課題への対応、事業推進上重要な会議の運営を担当

・2013年~2019年:ホンダ向けモビリティシステム開発担当組織に所属。トランスミッション制御開発、システム開発、ソフトウェア開発の基準・手順の策定案件、プラットフォーム領域に対する、システム開発・ソフトウェア開発の基準・手順の策定案件を担当。

・2020年~2022年:ホンダ向けモビリティシステム担当組織の課長(次世代電子プラットフォーム領域)

・2022年~2023年:同組織の副部長兼課長(先進安全、自動運転領域)

・2023年~現在:同組織の部長兼課長(先進安全、自動運転領域)

戦略的パートナーシップ締結は「ほぼゼロからスタートした長年にわたる活動」の結果

――2013年からホンダ向けのシステム開発を手掛けられていたとのことですが、今回の戦略的パートナーシップ締結に至るまで、ホンダ様とどのような業務をされていたのでしょうか。


鈴木氏:弊社は、ソフトウェア開発、システムインテグレーターとして長年の実績がありますが、車載事業は40年以上の歴史があります。

その中で2013年に、それまで中部地区が中心だった事業を関東でも展開しようということで、ホンダ様との取引が開始しました。

最初は1~2案件の小規模から始め、その後は毎年倍々になるような形で業務委託の規模は大きく成長してまいりました。

私が参加した当時にトランスミッションの制御開発から始まった事業領域は、その後ソフトウェアの検証や自動運転関連、そしてソフトウェアプラットフォームの開発へと、少しずつ拡大していきました。

ほぼゼロからスタートし長年にわたる活動の結果、今回戦略的パートナーシップの締結に至ったことは、私としても大変感慨深いものがあります。

SDM開発体制強化の領域は4つ

――SDMに向けた開発体制強化ということですが、具体的にどのような領域になりますか?


鈴木氏:「次世代電子プラットフォームのオペレーティングシステム」「電動パワートレーン」「先進安全、自動運転」「IVI(インビークルインフォテインメント)の4つです。

 

これまでの自動車開発が価値を置いていたのは、例えば「走る・曲がる・止まる」といった、車自体の性能でしたが、 現在はこれが成熟し価値観が変化しています。

SDMの時代、クルマの価値を決めるのはソフトウェアが中心となります。

自動車の開発のあり方が変わりつつある、ということになります。


これまでは新型車両の開発が完了して新車販売が始まると、アフターセールスを除いてビジネスは完結していました。

しかしこれからはスマートフォンのように、買った後にソフトウェアをアップデートして、いろいろ進化させることができるようになります。


つまり、売ったら売りっぱなし、ではなく、売ってアップデートをして付加価値をつけていく、自動車の商品性を高めていく、それが開発中だけでなくその後も継続するということになり、今まで以上にソフトウェアの開発ボリュームが膨大なものになることを意味します。


ホンダ様もそうですが、自動車メーカーは制御など組み込み系の開発は得意ですが、IT企業ではないので、急にソフトウェア開発が必要になったからといって、社内でソフトウェアエンジニアを集めるのは難しい。

そこで、我々ITの専門企業と、自動車メーカーが共創することで、相乗効果が生まれ、これから急拡大していくSDMの流れに確実に対応できるようになるという考えが背景にあります。


戦略的パートナーシップによりSCSK社とホンダ社の両社で開発の上位から共同してくことに

戦略的パートナーシップによりSCSK社とホンダ社の両社で開発の上位から共同してくことに

――これまでもホンダ様向けの開発を担われていたとのことですが、今回の「戦略的パートナーシップ」でそれがどのように変わるのでしょうか?


鈴木氏:端的に言って、ホンダ様との関係が大きく変わると思います

これまでもソフトウェア開発はしていましたが開発受託という形が多く、ホンダ様から出された要求仕様をもとに、それを実現するソフトウェアを開発支援するという立ち位置でした。

今回の戦略的パートナーシップにより、ホンダ様の開発チームの一員として中に入り、開発工程の中で横並びの形で仕事をすることになります。

両社で開発の上位から共同していくという点が意味合いとしては大きいと思います。

――これまでは業務受託としてある意味一線を引いていたところを、今後はS C S Kの社員がホンダの開発チームの一員として派遣されるということですね?このパートナーシップによる両社のメリットは、どのようなものだとお考えですか?


鈴木氏:SDMの時代が来ると先ほど述べましたが、ホンダ様に限らず自動車メーカーはソフトウェアの開発ボリュームが飛躍的に膨らんでいくと考えていて、その対応方法を模索しています。

業務委託の会社を増やすこともできるでしょうが、いろいろなプロジェクトが並行して進み工数が逼迫している中、自分たちの業務を切り出して、要求仕様に落とし込んで他社に開発を委託することが大変な作業になります。


そこで、我々が中に入って、多忙なところを一緒にやりましょう、私たちが受け持ちます、となった方が、お客様がより注力すべき領域、より上位の業務に人員をシフトできるのではないかと考えています。

特にIT領域に関して言えば、今までほとんどいなかったプロフェッショナルな人材が一気に増えるわけですから、これまでは難しかったIT関連の課題解決もどんどん進むと考えられます。

これはホンダ様にとって、大きなメリットだと思います。


弊社にとってのメリットですが、単純に事業のボリュームが広がるという点はありますが、それは本来の目的ではないと思っています。

今までのように、要求仕様をもらって、工数を見積もって、契約して開発し、納品・検収・支払いという形のビジネスだけを続けていくのは、今後IT人材も不足していくことを考えると、どうしても限界があります。


とはいえ、例えばモビリティの領域で、私たちが何か独自に作ろうとしても、今までの担当領域だけでは限界がある。より上位のシステム開発、システム設計の領域に踏み込めなかった現実があるので、ホンダ様と一緒に共創する中で、知識と経験を磨き、自分たちでモビリティに関するサービス開発を可能にしたいと考えています。

2030年を目処に、何らかの形で、SCSKが主導でのソフトウェア、モビリティ領域におけるソフトウェアやサービスを打ち出していければ思っています。


戦略的パートナーシップにおける採用や人材育成とは

――1000人規模となると、御社にとってもかなり大規模な人材の確保が必要になると思いますが、採用や人材育成に関してのお考えを聞かせてください。御社が求めている具体的なスキルや経験、エンジニアとしてのバックボーン、素養などについて教えてください。


鈴木氏:最初から自動車もわかります、ITもわかります、という人材は多くないと思っているので、様々な業界の方を広く受け入れて、ホンダ様と一緒に育成していくことになります。


今回のパートナーシップのスコープとなる4つの領域(次世代電子プラットフォームOS/電動パワトレ/先進安全・自動運転/IVI)のそれぞれで必要とされるスキルが異なります。

もちろん共通するところもあれば、領域独自のところもあります。例えばベーススキルとしてはITの基礎や制御開発の基礎ですが、その上にADAS、自動運転などそれぞれの領域に特化したスキルがあります。


新たに参加するメンバーは、スキルや経験をもとにできることとできないこと、必要なことと必要でないことを明確化して、その人に合った研修を話し合いながら選択し受講していただいた上で実際の業務を開始していただいています。

研修中も配属後の業務をイメージできるような情報共有をしたり、他メンバーや先輩社員との繋がりを作りながら過ごせるように心がけています。

――それはソフトウェアの経験がない方でも採用していくということでしょうか?


鈴木氏:はい、例えば自動車業界出身で自分の手を動かしてソフトウェアを作ったことがないというIT未経験者も入社しています。

足りない部分はキャッチアップしていただけるような機会を提供しています。


20代から50代の方まで、幅広い年代で採用実績があります。

例えばソフトウェア開発経験はあるが自動車関連はやったことがない方や、自動車の開発経験はあるがIT未経験という方も、積極的に採用させていただいています。

弊社に入って、“自分を成長させるのだ”という覚悟があれば、大歓迎です。

これからは「オープン系の開発開発ツールの知見」が求められる

これからは「オープン系の開発開発ツールの知見」が求められる

――これからのエンジニアに必要とされるスキル、習得すべき技術は、具体的にはどのようなものですか?特に、採用したエンジニアに対するサポートという視点で教えてください。


鈴木氏:CASEへの対応を進める中で、自動車業界におけるソフトウェアエンジニアに必要なスキルも変わりつつあります。

これまでは組み込み系が中心で、開発で使用するC言語や、モデルベース開発の専用ツールの知識などが求められていましたが、例えばIVIはAndroidなどオープンな新しいプラットフォームを使用しており、それに沿ったツールや、C++JavaPythonなど、オープン系の開発ツールの知見が求められています。


また、コネクテッド関係では、AWSなどのクラウド環境における開発に明るいエンジニアが必要になります。

これまでネットワーク関連の業務に携わっていた方で、自動車業界に興味はあるけれど、自動車メーカーはちょっと敷居が高いなと感じている方にとっても、良いチャンスになるのではないでしょうか。


弊社では、新卒採用後、新人研修が終わった後も数年かけてスキルを磨いていくための若手キャリア開発プログラムという体系的な研修制度があります。

これは新卒入社者に適用されるプログラムなのですが、当事業グループのキャリア採用ではIT系以外のエンジニアも採用するため、この研修制度が受講できるように手配しています。

キャリア入社者は入社と同時に現場配属されることが一般的だと思いますが、基礎の学び直しも含めて、まずはしっかり学んでいただく育成プランを昨年度から試験的に始めたところです。

SCSK社では「失敗を恐れず前向きに考え成長していく意欲がある方」が活躍

――最後に御社が求めるエンジニア像について、教えてください。実際にどのような方が活躍されているのでしょうか?


鈴木氏:これまでのキャリア入社者の中でも、失敗を恐れず、前向きにポジティブに考えられる方自分で成長していくのだという意欲がある方が活躍していると感じます。

実際に活躍されている方は、知らないことでも限られた情報の中で仮説を立てステークホルダーにぶつけて、それを元にドライブしていけるエンジニアです。誰にとっても新しい領域へのチャレンジですから、やりたいことはわかっていても、その方法や道筋はわからない状態から始めています。


指示を待っているだけでなく、一緒に考えていきましょうという姿勢でチャレンジできる人ですね。

そうした方々はきちんと評価されますし、今後こうなってもらいたいという期待感を伝えしますので、将来像を一緒に考えながら成長していただきたいと思います。

この記事の寄稿者

今回のSCSK社へのインタビューを通して、戦略的パートナーシップの背景と目的をお伺いすることで、今後の自動車業界におけるIT人材の重要性を再認識致しました。

IT人材へのキャリアチェンジをしたい方なども、教育体制やサポート体制の構築がされているSCSK社であれば安心して業務を行うことができる職場であると感じました。

成長意欲があり、仕事に対して前向きな方であれば、SCSK社には素晴らしい環境が揃っています。

私自身も大手総合ITベンダーのシステムエンジニアとして働いていた経験がございますので、IT業界への転身やご自身の活躍の場はどこにあるのかという相談がございましたら、お気軽にご相談下さい!

植村元輝
植村元輝

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