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生産技術とは?元エンジニアが語る仕事内容や転職市場などを紹介
生産技術職は“製造業・ものづくり”において欠かせない職種です。
この記事では、弊社に在籍している「元生産技術エンジニア」のコンサルタントが、実際の仕事内容や転職市場について徹底解説いたします!
生産技術とは?製造技術との違いも紹介
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皆さんは“生産技術”と“製造技術”という言葉の違いや定義をご存じでしょうか?
企業によっては範囲が違う場合もあるため、意外とこの2種類の言葉の定義の違いを知らない方も多いと思います。
下記に一般的な“生産技術”と“製造技術”の定義と範囲・目的をまとめてみました。
※企業様によっては「生産技術」と「製造技術」について、業務内容が密接に関係しているため分けていない場合もございます。
生産技術 (Production Technology)とは
【定義】
生産技術は、製品やサービスを製造または提供するための全体的なプロセスや手法を指します。
【範囲】
生産技術は、原材料の調達から製品の出荷までの全体的な生産プロセスを包括します。
これには製造、組み立て、検査、品質管理、在庫管理などが含まれます。
【目的】
生産技術は、製品を効率的かつ効果的に生産し、企業の生産力や生産の質を向上させることを目指します。
(例)
生産技術(Production Technology):
生産技術の目的は、生産における全体像を描くことです。
例えば、家を建てる際には、全体的なプロセスや計画、組織化が必要です。
建築家が設計を行い、建材を手配し、工事を進め、最終的に家を完成させるための総合的な計画や手法が、生産技術に相当すると考えると分かりやすいでしょう。
企業においても、原材料の調達から製品の出荷までの全体的な生産プロセスを効率的かつ戦略的に管理する手法を、生産技術と呼びます。
製造技術 (Manufacturing Technology)
【定義】
製造技術は、具体的に製品を製造するための技術やプロセスを指します。
【範囲】
製造技術は、具体的な製造プロセスや機械、ツール、設備などに焦点を当てます。
これには機械加工、成形、溶接、組み立て技術などが含まれます。
【目的】
製造技術の主な目的は、製品を製造するための具体的な技術やプロセスを開発・最適化し、効率的な製造を実現することです。
(例)
製造技術(Manufacturing Technology):
製造技術は、具体的な作業や工程に焦点を当てます。これは建築プロジェクトにおいて、実際にハンマーや釘を使って建物を組み立てたり、特定の工具や機械を使って細かい作業を行ったりする部分に例えることができます。
企業の生産においても、製造技術は具体的な製造プロセスや機械、工具、設備など、製品を具現化するための技術や手法を指します。
元生産技術エンジニアのコンサルタントが語る!主な仕事内容を紹介
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次に、弊社の元生産技術エンジニアに聞いた、主な生産技術職の業務内容をご紹介します。
工法開発
工法開発とは、製品を生産するための新しい工法(作り方)を開発することです。
既存製品の場合、工法開発は既存工程数の削減(例:2工程 → 1工程)、品質改善、コスト削減(組み立て・加工時間の短縮、設備・治具費の削減)などを目的として行われます。
一方、新製品で既存の方法では生産できない場合、新工法の開発が必須となります。工法によってコスト、品質、製造可能数が大きく左右されるため、生産技術者は自身の知識や経験に加え、企業としてのノウハウも活用して慎重に検討します。
立ち上げ
立ち上げとは、新製品を生産するにあたり、新規設備(ライン)または既存設備(ライン)で新製品が生産できる状態にすることを指します。
製品の量産は、営業が顧客から受注するための見積もり(RFQ)作成から始まり、受注決定後は設計図面を検討するフェーズ(DR)、量産準備開始(PO)後の詳細な計画作成を経て、量産開始へと進みます。
また、設備メーカーへの製作指示、治具・金型・検具の設計、各設備の良品条件の検討とトライアル、量産流動デモの実施などを含みます。最終的には製造現場へ受け渡しを行い、その後の改善業務を継続することが、立ち上げ業務の全体像です。
設備設計
社内で生産設備を内製している場合、生産技術部門の設備設計エンジニアが設計を担当します。
企業によって異なりますが、多くの場合、機械設計担当と電気(ソフト)設計担当が分かれています。また、社内での設備設計・製造が難しい場合は、外部に発注することもあります。その際、生産技術担当者が仕様書の作成や打ち合わせを担当し、スムーズな設計・製造の進行をサポートします。
内製・外注のいずれの場合でも、設計した設備が完成した後はトライアルに立ち会い、仕様を満たしているかを確認します。問題があれば、改善策を検討し、必要な調整を行います。
解析
近年、生産における解析業務(シミュレーション)を活用する企業が増えています。
例えば、樹脂製品の射出成形工程では、生産条件を入力して流動解析を行うことで、以下の点を事前に検討できます。
● 製品形状に問題がないか
● 金型に問題がないか
● 最適な生産条件は何か
これにより、製品設計へのフィードバックが可能になり、金型の問題点を製作前に改善できます。
さらに、製作コストやトライアルコストの削減、手戻りの防止、製品設計の品質向上といったメリットも期待できます。
上記は樹脂製品の事例ですが、プレス成形、鍛造、圧縮、機械加工など、さまざまな分野で解析を活用し、品質向上やコスト削減が行われています。
※解析業務は開発部門が担当する場合もあり、その役割分担は企業によって異なります。
量産後の改善
量産を開始した後も、さまざまな問題が発生します。
例えば、以下のような課題が挙げられます。
● 製品不具合:不良品が多発する
● 設備トラブル:頻繁に機械が停止する
● 生産性向上:マシンタイムを短縮したい(ボトルネック工程が中心)
● 治具の改善:セット性が悪い
● 段取り改善:作業の段取りが悪い、段取りミスが発生する
これらの問題は、品質やコスト、安全性に悪影響を及ぼすため、生産技術職の重要な役割として、改善に取り組むことが求められます。
改善を通じて、品質向上・コスト削減・安全性向上を実現することが、生産技術の大きな使命です。
生産技術職に向いているのはどんな人?アピールできる能力とは
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生産技術職への転職を目指すなら、適性やアピールしやすい能力を知っておくことが重要です。
自分に当てはまる項目があれば、それを積極的にアピールすることで転職を有利に進められます。
一方で、不足している要素があれば、事前に補う方法を考えることも可能です。
以下の項目を参考にしながら、転職活動に役立ててください。
数値処理や解析、理論的な考察が得意な人
生産技術は、生産数量の向上、歩留まりの改善、作業性の向上など、「昨日より今日、今日より明日」と、製造状況を少しでも良くするためのたゆまぬ努力が求められる職種です。
そのため、自ら能動的に課題を見つけ、問題を改善していくことが好きな人は、生産技術職に向いています。
また、数値データの収集・集計・解析が得意な人や、目の前の現象を論理的に捉えて分析できる人も、この職種に適しています。
実験・効果検証が好きな人
製造工程で改善に取り組む際、机上の検討だけで進めることはできません。
製造現場には人が介在するため、計画通りに進まないことも多く、生産技術職には具体的な実験を行い、効果を検証するスキルや素養が求められます。
例えば、以下のような改善が挙げられます。
● 設備更新による省エネ効果の検証
● 自動化による人件費・作業時間の削減
● 作業者が戸惑う工程の改善
● 無理な動作の排除
これらの取り組みは、ものづくりにおいてコスト削減や安全性の向上に直結します。そのため、改善策を考えるだけでなく、実際に試しながら効果を検証し、より良い方法を追求することにやりがいを感じる人は、生産技術職に向いています。
柔軟性がある人
生産技術者は、予期せぬ事態を防ぐために日々尽力しますが、それでもトラブルは発生します。
例えば、以下のような問題が考えられます。
● 製造ラインの不具合
● 従業員のケガ
● 発注した材料が届かない
● 従業員や部署間の行き違いによるトラブル
これらの問題をすべて事前に防ぐことは難しく、生産技術者には、突然のトラブルにも冷静に対応し、ダメージを最小限に抑える力が求められます。
状況に応じて臨機応変に対処できる柔軟性を持つ人は、生産技術職に適しています。
コミュニケーションが好きな人
製造現場では、日々さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
しかし、生産管理・品質管理・物流管理・製造部門・工場長などと日頃から良好な関係を築いておけば、問題が発生した際も円滑に協力を得ることができます。
周囲とのコミュニケーションを大切にできる人は、職場環境をより良くしながらスムーズに業務を進められるため、生産技術職に向いています。
生産技術職で有利な資格はある?
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生産技術エンジニアに必須の資格はありませんが、工場全体を管理する立場として、以下の資格は有効です。
すでに取得している方は、転職時に強みとしてアピールするとよいでしょう。
また、今後転職を視野に入れている方は、これらの資格取得を検討するのもおすすめです。
エネルギー管理士
エネルギー管理士は、電気や熱エネルギーの使用量を適切に管理する国家資格です。
経済産業省が管轄し、一般財団法人 省エネルギーセンターが運用しています。
原油換算でエネルギー使用量が3,000kl(キロリットル)を超える工場では、エネルギー管理士の選任が義務付けられているため、この資格を持つことで大手企業への転職のチャンスが広がります。
また、近年は省エネルギー対策に関連した補助金制度の創設により、エネルギー管理士の需要が高まっています。今後の将来性を考えても、有益な資格の一つと言えるでしょう。
電気主任技術者
電気主任技術者は、発電所や変電所、工場、ビルなどの受電設備や配線の保安監督を行うための国家資格です。
経済産業省が管轄し、一般財団法人 電気技術者試験センターが運用しています。
資格は第一種から第三種までの3種類があり、比較的取得しやすいとされる第三種でも合格率は15~20%程度と、決して簡単ではありません。
そのため、計画的な学習が必要ですが、高難易度の資格だからこそ価値が高く、転職時の強みになります。
また、この資格を持っていると、電気設備の点検や故障対応ができるため、生産技術職としての活躍の幅も広がります。
電気工事士
電気工事士は、電気工事や設備のメンテナンスを行うための国家資格です。
経済産業省が管轄し、一般財団法人 電気技術者試験センターが運用しています。
資格には第一種と第二種があり、それぞれ対応できる範囲が異なります。
● 第二種電気工事士:小規模な配電盤や設備配線の工事が可能。生産技術職として取得しておくと、業務の幅が広がる。
● 第一種電気工事士:高圧変電設備(キュービクル)の取り扱いが可能。大規模な工場でも活躍できる場面が増える。
また、電気工事士の資格は求人市場でも需要が高く、転職時の強みになります。
工場設備のメンテナンスや改善業務に関わる生産技術職にとって、有益な資格の一つです。
機械保全技能士
機械保全技能士は、設備のメンテナンス業務に必要な知識や技能を証明する国家資格です。
厚生労働省が管轄し、資格試験の運用は公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会が行っています。
生産技術職にとって設備の保全は非常に重要な業務であり、機械保全技能士の取得に向けた学習自体が、知識やスキルの向上につながります。
また、資格を取得することで、設備保全の専門知識を持つ証明となり、転職時のアピール材料としても有効です。
生産技術者のキャリアパスは?
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製造現場の改善に終わりはなく、自動化・省人化に関連する新技術が次々と生まれています。
例えば、IoTやAIの発達、DXの浸透などにより、製造業の中でも成長を続ける分野が多数あります。
そのため、製造業を支える生産技術職の将来性も十分に期待できます。
新しい技術を積極的に学び、取り入れる姿勢を持つ生産技術者は、多くのアイデアやノウハウを蓄積できるため、長期にわたって活躍することが可能です。
生産技術職のキャリアパスとしては、社内で技術やスキルを磨き、実績を積みながら工場長などの技術系トップを目指す道があります。
また、コスト意識や管理スキルを生かし、部長職などのゼネラリストとしてキャリアを広げる道も選択肢の一つです。
さらに、大手企業への転職によるキャリアアップや、業務経験を生かしたコンサルティング職への転向など、多様な選択肢があります。
生産技術職のキャリアパスは幅広いため、自分の志向やライフスタイルに合った道を見つけ、成長を続けていきましょう。
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本記事では、生産技術職の基本的な業務内容や転職市場についてご紹介しました。
生産技術の経験やスキルは、エンジニアの皆さんが思っている以上に幅広く応用できる職種です。
そのため、自分で転職活動を進めるだけでなく、転職エージェントに相談し、自身では気づかなかった強みや転職に有利なポイントを把握することも重要です。
メイテックネクストは、エンジニアに特化した転職支援サービスを提供しており、生産技術職に求められるスキルや最新の転職市場の動向について熟知しています。
また、キャリアアドバイザーは元エンジニア出身者が多く、専門的な視点でサポートできるのが強みです。
ご自身が考えるストレートなキャリアパスはもちろん、これまで気づかなかった新たなキャリアや職種の可能性も提案できるため、転職満足度が高いのも特徴です。
さらに、メーカーやものづくりに関連する企業の求人を豊富に保有しており、他社と比較しても選択肢が多い点も大きな魅力です。
生産技術エンジニアとしての転職を考えている方、または生産技術職に挑戦したい方は、ぜひメイテックネクストにご登録のうえ、ご自身のキャリアについてご相談ください!
この記事の寄稿者
学生時代に機械システム工学を専攻。卒業後は精密機械メーカーで生産技術として国内外で11年勤務後、
エンジニア特化の転職支援メイテックネクストに入社をいたしました。
現在は、前職での経験を活かし、機械系(企画・設計・生産技術・品質)、プラント系のエンジニアを中心に、
延べ4000名を超える技術者の転職相談を承っております。モノづくり全体を把握しており、幅広い職種の方を網羅的にご支援させていただいております。
- 熊谷 英治